JRA上半期G1で「妙味」があったのは川田将雅!? 最も頼りになったのはC.ルメールも…… 1番人気受難でエフフォーリア、ソダシは「無敗二冠」達成ならず
先週、クロノジェネシスの制した宝塚記念(G1)を以って、今年上半期のJRA・G1の開催が終了。7月からは本格的に夏競馬が到来を告げる。
来年のクラシックに向け、楽しみな2歳馬たちのデビューも待ち遠しいが、その前にここまでのG1レースの結果を振り返ってみたい。
2月のフェブラリーSから宝塚記念まで、G1レースは12回の開催があった。最初こそカフェファラオが1番人気に応えて優勝したが、それ以外で1番人気が勝利したのはヴィクトリアマイルのグランアレグリア、宝塚記念のクロノジェネシスの2勝。全体としては12戦で計3勝を挙げた。
単勝オッズ1倍台の断然人気に支持された馬でも、大阪杯でコントレイルが3着、オークスでソダシが8着、日本ダービーでエフフォーリアが2着と敗れたように、取りこぼしも目立つ。
ただ、人気面については12レース中11レースで4番人気以内の馬が勝利。最も荒れたのは8番人気の伏兵ダノンキングリーが制した安田記念だった。そういう意味では大波乱続きだったという訳でもない。
ちなみに最も堅い決着だったのは、2番人気ダノンスマッシュが制した3月の高松宮記念(G1)だ。2着に1番人気レシステンシア、3着に3番人気インディチャンプが入り、2→1→3人気の3連単は9770円と万馬券にも届かなかった。
逆に最も波乱に終わったのは、牝馬クラシック第2弾のオークス。圧倒的支持を受けた白毛の女王ソダシが8着に惨敗。3番人気ユーバーレーベンを勝利へ導いたのは、M.デムーロ騎手だった。
無敗二冠を期待されたソダシが人気を大きく裏切った上に、2着にこそアパパネの仔アカイトリノムスメが入ったが、3着に食い込んだのは18頭立ての16番人気ハギノピリナ。単勝オッズ215.4倍の超大穴の激走により、3連複ですら10万9190円、3連単に至っては53万2180円の払戻となった。
次は騎手の成績に注目したい。12勝の内訳はルメール騎手が4勝、川田将雅騎手が3勝、福永祐一騎手が2勝、デムーロ騎手、吉田隼人騎手、横山武史騎手が各1勝ずつ挙げた。
上半期のG1で1番人気が人気に応えたのは3回だが、実はすべてがルメール騎手によるもの。2番人気シュネルマイスターでNHKマイルCを優勝しているように、人気馬でしっかりと結果を出すのがルメール騎手の特徴でもあり、信頼の高さといえる。
これに対し、川田騎手の3勝は2番人気ダノンスマッシュとのコンビで初めて国内G1を勝利した高松宮記念、4番人気レイパパレでコントレイル、グランアレグリアを破った大阪杯、8番人気ダノンキングリーでグランアレグリア相手に金星を上げた安田記念と、いずれも1番人気以外の馬。逆に1番人気ダノンザキッドの皐月賞15着やグレナディアガーズのNHKマイルC3着のように、人気に応えることが出来なかった。
ルメール騎手の成績は【4.3.0.4/11】で勝率は驚異の36.8%で単勝回収率は91%。これに対し、川田騎手は【3.0.2.7/12】で勝率は25.0%で単勝回収率は548%でライバルを圧倒。2人の傾向としては、人気のルメール、穴の川田といったところか。
終わってみればやはりこの二人の一騎打ちとなった上半期のG1。昨年の全国騎手リーディングでも1位、2位を分け合った。今年は川田騎手が年始のスタートダッシュに失敗し、大きな出遅れを見せたが、以降は勝ち星を量産して“定位置”の2位まで上がっている。
どうやら秋のG1戦線もこの二人を中心に回っていきそうな気配だ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。