JRA クロノジェネシスに立ちはだかる「絶望的」なハードル!? 日本競馬の悲願が遠のいたライバルの敗戦、凱旋門賞(G1)は空前の超ハイレベル?

 先週行われたJRAの重賞は、新潟千直のアイビスSD(G3)のみ。多くの有力馬が休養中の夏競馬ということもあり、もうひとつ盛り上がりを欠いたが、海外では注目のレースが開催された。

 それは、前日の24日にイギリスのアスコット競馬場で行われたキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(G1・以下KGVI & QES)である。中長距離で行われるヨーロッパで最高峰のレースのひとつとしても知られている。

 過去、日本調教馬は1969年のスピードシンボリから始まり、計6頭参戦したが、2006年に出走したハーツクライの3着が最高着順。凱旋門賞(G1)同様、日本馬にとって高い壁として立ちはだかっている。

 今年のKGVI & QESは、ワンダフルトゥナイトが馬場状態を理由に出走を取り消して、5頭立ての開催。注目の1番人気はプリンスオブウェールズS(英・G1)を制し、G1・5勝の4歳牝馬ラブ。2番人気に英ダービー馬アダイヤー、3番人気に愛ダービー2着馬のローンイーグル、4番人気にドバイシーマクラシック(G1)を制したミシュリフ、5番人気に産クルー大賞(G1)を制したブルームとなった。※英ブックメーカー・ウィリアムヒルのオッズ参照

 そんなハイレベルのメンバーで争われた芝2390mの一戦は、アダイヤーが1馬身3/4差でミシュリフを退けて快勝。1番人気のラブは2着ミシュリフからさらに1馬身3/4差の3着と敗れた。

 ミシュリフが、強力メンバー相手に下馬評を覆したものの、この結果は日本競馬の悲願といわれる凱旋門賞(G1)制覇には、絶望的に思える結果だったかもしれない。

クロノジェネシス 撮影:Ruriko.I

 今年の凱旋門賞に登録した日本馬の大将格と見られているのは、グランプリレース3連覇を達成したクロノジェネシスだが、自身初の海外遠征となったドバイシーマクラシックでミシュリフ相手にクビ差の2着と敗れている。

 大目標である凱旋門賞でどこまで好戦することが可能なのかの物差しとなるミシュリフが、欧州の一線級相手に苦戦していることは他人事ではない。

 欧州勢の高い壁を痛感させられたのは、セントマークスバシリカが圧勝した今年のエクリプスS(英G1)だ。

 稍重で行われた芝1990mのレース。最後の直線を抜群の手応えで先頭を走っていたミシュリフだが、後ろにいたセントマークパシリカの繰り出す末脚に並ぶ間もなく交されて3馬身1/2+クビ差の3着。一度は交わしたはずのアデイブにもゴール前で差し返される完敗を喫した。この敗戦がKGVI & QESで4番人気という評価にも繋がった。

 そして、これだけの強さを見せたセントマークパシリカでさえ、日本時間26日時点の凱旋門賞でスノーフォール、アダイヤーに次ぐ3番人気に過ぎないことも、今年のハイレベルを象徴しているといえる。

 現在、ミシュリフと同じく8番人気に想定されているクロノジェネシスは、本番でO.マーフィー騎手とのコンビも決まった。現役最強馬の一角として善戦を期待されているが、同馬と同等の能力と考えられるミシュリフの対欧州馬の成績を物差しとすると、日本競馬の悲願達成というハードルの高さを痛感させられたKGVI & QESの結果でもあった。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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