JRA「カフェイン処分」で遅れてきた“大物”が快勝!今夏最大の“上がり馬”は横山武史にとって“脅威”となるか
15日の札幌最終レース藻岩山特別(2勝クラス)を制した、ソーヴァリアント(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)。これで6月19日に行われた利尻特別(1勝クラス)から連勝を飾り、短期間で条件戦を勝ち上がった今夏の“上がり馬”として注目を集めている。
藻岩山特別では、楽な手応えで4コーナーを通過。最後の直線では鞍上が後ろを振り返る余裕を見せた圧勝劇を披露。騎乗した横山武史騎手は「強かったですね。重賞でもチャンスのある馬だと思います」とコメント。前走の利尻特別も、札幌の芝2000mで上がり33.0秒をマークする好内容。結果はもちろん、ひと夏の間に大きな成長を遂げたことを予感させた。
父はあのオルフェーヴル。母ソーマジックは、昨年の秋華賞(G1)2着馬マジックキャッスルと同じで、デビュー当初から注目を集めていたソーヴァリアント。しかし3つの白星を掴むまでの道程は、決して平坦ではなかった。
昨年10月の新馬戦は3着。2戦目の未勝利戦で1着入線を果たすも、競走後に禁止薬物「カフェイン」が検出されてまさかの失格。その後、出走停止処分が明けたソーヴァリアントは今年1月に未勝利戦を2度も使われ、デビュー4戦目でようやく初白星。続く弥生賞(G2)で重賞初挑戦するも、8番人気で4着に終わった。
しかし凡走というなかれ。“ひと頓挫”あったにもかかわらず強敵揃いの弥生賞で4着に入るのだから、同馬に対する陣営の評価の高さが伝わる。次走について明言はされていないものの、セントライト記念(G2)に使われる可能性はある。
ソーヴァリアントの鞍上を振り返れば、弥生賞から前走の利尻特別で大野拓弥騎手が騎乗。何事もなければ、継続騎乗が濃厚だったかもしれない。だが、大野騎手は14日から22日まで騎乗停止となり、横山武騎手の「代打騎乗」が実現したという経緯がある。
しかし、横山武騎手はすでにセントライト記念と菊花賞(G1)への出走を表明しているタイトルホルダーとのコンビが決定済み。仮にソーヴァリアントがセントライト記念や菊花賞に駒を進めても、同馬に騎乗できない状況だ。
一方で、エフフォーリアが菊花賞に出走せず、秋の天皇賞(G1)へと目標を切り替えたように、ソーヴァリアントもどちらに出走するかはまだわからない。
いずれにしても、横山武騎手のコンビ継続は難しいといえるだろう。
「現状は身体に緩さがあります。まだまだ成長するところはありますけど、これからが楽しみですね」と結んだ横山武騎手。いずれ対決する運命にあるソーヴァリアントを“脅威”と感じていることがうかがい知れる発言でもある。
セントライト記念はもちろん、菊花賞や天皇賞・秋のどちらに出走してきても、手強い相手になると感じているに違いない。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。