JRA「カナロア×バクシンオー」究極スプリンターの血が覚醒!? 「1分6秒0」驚愕レコード叩き出したファストフォース、北九州記念(G3)でも「フロック視」禁物の理由
22日、札幌競馬場では白毛のアイドルソダシとラヴズオンリーユーが激突する札幌記念(G2)が開催予定。牝馬のトップ級2頭の対決は、今夏最大の注目となりそうだが、小倉競馬場の北九州記念(G3)も楽しみな一戦である。
昨年は、ハイペースで逃げ粘るモズスーパーフレアをレッドアンシェルが差し切って優勝。本番のスプリンターズS(G1)では、2頭とも着外に終わったが、10番人気で3着に激走したのは北九州記念で3着のアウィルアウェイだった。今年も本番で一発を狙う馬が揃っただけに、見逃せないレースとなりそうだ。
中でも前走のCBC賞(G3)を、驚愕のレコード1分6秒0で勝利したファストフォース(牡5、栗東・西村真幸厩舎)の持ち時計は群を抜いている。
7月3日の小倉10Rでプリモダルクが芝1200m戦を1分6秒4で叩き出し、1999年の北九州短距離S(OP)で武豊騎手とアグネスワールドが記録した従来のレコードを0秒1更新したばかり。22年ぶりの衝撃の余韻も残る翌日、さらに0秒4も更新したスピードは恐るべしだ。
勿論、芝1200m以外でもレコードが出た小倉コースのコンディションも、レコードの背景にあることは間違いなさそう。だが、前半600mを32秒3という超ハイペースで飛ばしての逃げ切り勝ちは、能力なくして出来ない芸当でもある。
そんなファストフォースのスピードの根幹をなすのは、父ロードカナロア×母父サクラバクシンオーという血統。日本競馬を代表する名スプリンターの血が、究極ともいえるスピード決着で遺憾なく発揮されたのだろう。
その一方、前走の勝利をフロック視する向きもあり、下馬評では伏兵の評価に過ぎないことも確か。とはいえ、再度の激走を予感させるのが今年の変則開催だ。例年であれば、中京で行われるCBC賞はオリンピックの影響で小倉開催。レコード勝ちした同舞台で走れるのは心強い。
「格上挑戦ながら重賞を制したことにより、斤量は前走の52.0キロから3キロ増えて55キロになりますが、500キロを超える大型馬なら大きな割引にならなさそうです。問題はやはりゲートでしょうか。
前走も遅れ気味のスタートから押して押してハナを奪いました。今回は抜群のダッシュ力を誇るモズスーパーフレアとの先行争いが、好走のカギを握るでしょう。追走に手一杯になるようだと、脆さを見せる可能性もあります」(競馬記者)
このレースを制すれば、スプリンターズSで有力候補の一角に名乗りを上げることも夢ではない。
「行ききれれば、チャンスはあると思っていました」
前走のレース後、ファストフォースの勝因について、そう振り返った鮫島克駿騎手。好走するには、何が何でも行き切る覚悟が必要となる。
九州地方は悪天候が続いており、今週末も良馬場での開催は見込み薄かもしれないが、見事勝利を手にして、“晴れやかな笑顔”を見せることが出来るだろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。