JRA福永祐一に待ち受けていた「皮肉」な結果!? ゲート互角なら勝てたと悔やむも……、1番人気ジャンダルムに騎乗した男を襲った3つの誤算
22日、小倉競馬場で行われた夏のスプリント重賞・北九州記念(G3)は、幸英明騎手が騎乗したヨカヨカ(牝3、栗東・谷潔厩舎)が勝利した。熊本県産のヨカヨカは、これが嬉しい初重賞制覇。熊本産馬として初の偉業を成し遂げた。
「最後は無我夢中でした。ラスト1ハロンぐらいからすごい歓声があがっていて、聞こえていました」
レース後のコメントで「最後は必死だった」と振り返った大激戦。2006年に距離が芝1200mに短縮されて以降、3歳馬の勝利はなし。決して相性のいいレースではなかったが、幸騎手の好騎乗が最高の結果を導いた。
幸騎手は、ヨカヨカを管理する谷潔調教師の父である谷八郎(元調教師)さんにも多くの九州産馬に乗せてもらった過去もある。師が亡くなって今年一周忌があったばかりのタイミングでの朗報に感慨深い様子だった。
そんな亡き師への想いを馳せた幸騎手とは対照的に、複雑な心境だったのは福永祐一騎手だったのかもしれない。
福永騎手は1番人気ジャンダルム(牡6、栗東・池江泰寿厩舎)に騎乗して7着だった。デビュー初の芝1200mを使われた前走では、2着に2馬身半の差をつける完勝。名スプリンターとして名を残した母ビリーヴの血がようやく花開いたレースでもあった。好メンバー相手に最後の直線でも鋭い末脚を繰り出したものの、先行勢が残る展開で不完全燃焼に終わった。
「ゲートの中でうるさいところがあると聞いていましたが、トモを落とした時にゲートが開いてスタートで遅れました。今日はそこに尽きます」
約1分で勝負が決まる短期決戦において、出遅れは致命的な不利。「ゲートが互角だったら勝つ力はある馬」と、悔やんだのも決して強がりではなかっただろう。
その一方で、今年の北九州記念は、福永騎手にとって何とも皮肉な結果が待ち受けていたともいえる。
そもそも勝ち馬のヨカヨカは、2歳夏のデビューから福永騎手が騎乗し、3連勝したほどの素質馬だった。昨年の阪神JF(G1)で5着に敗れてから幸騎手へと乗り替わり。かつてのお手馬に敗れた格好だ。
また、武豊騎手が騎乗して5着に入ったレッドアンシェルにしても、昨年の北九州記念で騎乗して優勝したかつてのパートナー。にもかかわらず、ジャンダルムとコンビを結成した経緯もある。
1番人気馬に騎乗することは成功したとはいえ、まさかの出遅れ。さらには“捨てた”格好の2頭いずれにも先着を許してしまったのでは、結果的に“空回り”になったというよりなさそうだ。
この屈辱には本人も思うところがあるはず。秋の重賞戦線での奮起に期待したいところだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。