JRAヨシオの調教師「マジック再現」狙うも不発!? 未出走馬2頭を重賞にエントリーしたものの……、今回ばかりは取り下げとなった裏事情
29日、新潟競馬場では芝1600mの新潟2歳S(G3)が行われる。
過去10年の勝ち馬には桜花賞馬ハープスターや、今年のマイラーズC(G2)を制したケイデンスコール。2着馬にも後の皐月賞馬イスラボニータや、国内外でG1・3勝を挙げたジャスタウェイなどが名を連ねる出世レースだ。
偉大な先輩たちに続かんとばかりに、今年も14頭の若駒がエントリーしてきた。
中でも一際目を引いたのは、オカンモシャチョウとピンクダイヤの2頭ではないだろうか。共にまだ1戦もしていない未出走馬。管理するのは栗東の森秀行調教師だ。
森師といえば今月14日、未出走馬であるデュガをいきなりオープン特別のフェニックス賞でデビューさせたことで、大いに話題を集めた。武豊騎手を背に不良の馬場コンディションを、後方から差を詰めて3着を確保。新馬戦2着の賞金である280万円を上回る400万円を見事に獲得している。
また、2018年には、同じく未出走馬のヘヴィータンクを弥生賞(G2)に出走させている。10頭立ての10着に終わったものの、出走奨励金と出走手当あわせて約150万円を獲得しつつ、レースから3日後の3月7日に早々と競走登録を抹消。JRAから140万円の給付金が支払われ、生涯成績は1戦0勝ながらも約290万円を稼ぎ出すというマジックを炸裂させた。
オカンモシャチョウとピンクダイヤが、重賞である新潟2歳Sでデビュー戦を迎えることとなれば、グレード制導入以降ではヘヴィータンク以来、約3年ぶり2回目のレアなケースとなる予定だった。
前回、この奇策を成功させたフェニックス賞と18年の弥生賞はともに10頭立て。平地のオープン競走と重賞競走では10着までの馬に出走奨励金が交付される。そのため、ヘヴィータンクは当時のルールでは完走が条件。ルール改正された現在だと、デュガはタイム差による減額措置の対象にさえならなければ、あとは完走するだけで出走奨励金と特別出走手当が満額で発生した。
ところが、今年の新潟2歳Sは14頭がエントリーしている状況。仮に全馬が出走してきて14頭立てとなれば、完走しても10着以内に入ることができなければ出走奨励金を手に入れることはできない。特別出走手当のみを得たところで、それほどの旨味はないかもしれない。
さらに、デュガが出走したフェニックス賞はオープン特別にもかかわらず、中央で勝ち上がった馬が3頭しかいないという、いわば未勝利戦にも近いようなメンバー構成だった。
新潟2歳Sはオカンモシャチョウとピンクダイヤ以外の12頭は全馬中央で勝ち上がりを収めている。フェニックス賞と違って非常に粒ぞろいのメンバー構成といえるだろう。
「札幌からC.ルメール騎手が乗りに来るアライバルや、ステラヴェローチェの半妹クレイドル、川田将雅騎手×中内田充正厩舎コンビのセリフォスなど、今年の新潟2歳Sは非常に強力なメンバーが揃いました。
仮に14頭立てとなった場合、これらの馬たちを相手に、オカンモシャチョウとピンクダイヤの2頭が10着以内に入るには、かなりの苦戦を強いられたかもしれません」(競馬誌ライター)
森マジックの再現に注目が集まったが、最終的には回避が決定。
さすがに分が悪いと見たのか、オカンモシャチョウは29日の新潟芝1600m新馬戦、ピンクダイヤは同日の新潟ダート1200mで行われる新馬戦に向かうことが、それぞれ発表された。
ヨシオのジャパンC(G1)参戦など、これまで数多の常識を打ち破ってきたものの、引くときはしっかりと引く。こういった冷静さも、森師の名トレーナーたる所以だろう。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。