JRAたった2人だけ! 新馬戦Vはルーキー騎手にとって高すぎる“壁”?「最後の砦」は10月復帰予定の新馬戦“未経験”のあの新人女性騎手?
8月29日の小倉6Rで、3番人気のホワイトターフが勝利した。同馬に騎乗していた永島まなみ騎手は、今年デビューした新人女性ジョッキー。自身初となる新馬戦での1勝を記録した。
6月からスタートした2歳の新馬戦も8月まで消化。ちょうど2ヶ月が経過した時点で、今年の新人騎手8人のうち、新馬戦を勝利したのは先述の永島騎手と小沢大仁騎手の2人のみ。ほか6人は新馬戦で未勝利のままだ。
さらに新馬戦に騎乗する機会がまだないのは、西谷凜騎手と古川奈穂騎手。ケガで戦線離脱中の古川奈騎手は仕方ないにしても、“粒ぞろい”と評された今年のルーキーズたちは、総じて新馬戦という“壁”にブチ当たっている。
かつて藤田菜七子騎手は、自身のデビュー年に新馬戦へ初騎乗する際に、「新馬は物見をしないようになど、気をつけなければならないことが多いですね」と答えている。この発言からも、経験の浅い新人騎手にとって難易度が高いレースといえる。
とにかく、ジョッキーにとって気を使うことが多いのが新馬戦の特徴だ。競馬場のスタンド、大勢の人間、大音量の場内放送やファンファーレ。見るもの、聞くものすべてが珍しく、キョロキョロと物見する新馬を真面目にレースに参加させるには、騎手としてもそれ相応の経験が必要になる。
勝利した永島騎手はレース後、「ゲートを出て促すとスッと反応してくれました。1頭になるとフワフワしましたけど、並ばれてからは集中していい手応えでした」とコメント。レースを経験したことがない新馬には、ゲートをスムーズに出ない馬や、ハナに立つと気を抜いて走るのを止めてしまう馬もおり、ある意味“手探り状態”で騎乗している様子が読み取れる。
新馬戦で苦戦するルーキーズに対して、大の得意としているのが福永祐一騎手。今年の2歳新馬戦で最多の12勝をマークしている。次点は10勝の川田将雅騎手で、さらに6勝のC.ルメール騎手が続く。全国リーディングベスト3に名を連ねるトップジョッキーたちが、新馬戦でも多くの勝利を記録している点は偶然ではないだろう。
新馬戦で勝ち星を挙げるには、有力新馬の騎乗依頼を集めることが必須条件。彼らトップジョッキーに依頼が集中するのは、新馬の扱い方を熟知しており、信頼できる確かな騎乗技術があるからにほかならない。
手塩にかけて育てた大切な新馬をデビュー戦へ送り出す、調教師や馬主からの信頼を勝ち得るジョッキーになれるかどうか。そこには新人騎手とトップジョッキーの間にそびえ立つ、簡単には超えられない“壁”がある。
新馬戦で苦戦する8人のルーキーズのなかで、「最後の砦」として期待したいのが、左肩の負傷で戦線離脱中の古川奈騎手だ。4月末の騎乗で左肩に違和感を覚え、5月11日には手術に踏み切った。10月中の復帰に向けて懸命にリハビリとトレーニングに励んでいる様子が公開されたばかり。
初勝利から4週連続勝利を記録するなど、鮮烈なデビューを果たした古川奈騎手が、初体験となる新馬戦でどのような騎乗ぶりをみせるか、今から楽しみに待ちたい。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。