JRA川田将雅へ「金言」も福永祐一に壮大なブーメラン!?「安易に逃げてはいけない」痛恨の“黒歴史”に刻まれた、もう1つの「選択ミス」

「前走で逃げたことが敗因だと言われても仕方がないし、どんな批判も受け入れなければいけないと思っている」

 2016年の10月のことだ。2日のスプリンターズS(G1)で1番人気のビッグアーサーに騎乗したものの12着に敗れた福永騎手は、その2日後に当時『netkeiba.com』で連載中だった『祐言実行』の中で当時の心境を綴っている。

 同年の高松宮記念(G1)でG1初制覇を飾り、前哨戦となったセントウルS(G2)も快勝。ビッグアーサーがスプリンターズSで単勝1.8倍となったのは、至極当然の評価だった。

 しかし、1枠1番からスタートしたレースでは激しいマークに遭い、最後の直線で行き場をなくす痛恨のアクシデント。レース後、福永騎手は自身の騎乗を「最低の騎乗」と吐き捨て、失意のどん底にいた。

 今や、川田騎手と同じく押しも押されもせぬトップジョッキーとなった福永騎手にとっても“黒歴史”といえるほど痛恨の騎乗ミス……。

 だが、本人が「前走で逃げたことが敗因だと言われても仕方がない」と述べているように、根本的な原因はむしろ前哨戦のセントウルSにあったのかもしれない。

 後のスプリンターズSと同じ1枠1番で迎えたセントウルS。好スタートを決めたビッグアーサーは迷わずハナに立った。これまでのキャリアで一度も逃げたことがなかった馬が、あっさりとハナに立っての快勝劇。当時のマスコミも「変幻自在」「完全に本格化」など、スプリント界の新王者の充実ぶりを絶賛した。

 ただ、そこに異を唱えていたのが、レース中継を行った『みんなのKEIBA』(フジテレビ系)に出演していた細江純子さんだ。

 細江さんは「前哨戦の勝ち方としてはどうなのか」と、逃げて快勝した福永騎手の騎乗に疑問を呈すと、「次のレースでも逃げてしまうのでは」と本番への懸念も口にしていた。

「花の12期生」の1人だった細江さんが何故、同期となる福永騎手に対して、このような騎乗批判をしたのか。その理由の一端は先週のコラム「逃げることは『最後の手段』」で川田騎手が大いに語っているので、重ねて参考にしていただきたい。

 要点をまとめるなら、川田騎手の「安易に逃げたことで我慢が利かなくなったりして、多くの馬が出世しづらくなる」という言葉に集約されているだろう。

 無論、福永騎手はその川田騎手へアドバイスを送った本人なのだから、そんなことは重々承知していたはずだ。あのスプリンターズSが5年前ということは、福永騎手が若かりし川田騎手へアドバイスを送ったのは、もっと以前のことだろう。

 ただ逆に言えば、だからこそ再び1枠1番に入ったスプリンターズSで、福永騎手はあえて「逃げ」を選択しなかったのではないだろうか。実際に、前走の影響かレース前半ではかなり行きたがる素振りを見せていたが、ここで再び逃げると「ビッグアーサーの将来に大きく影響する」と考えたが故に……。

『VOICE』の中で川田騎手が、レイパパレで勝った今春の大阪杯(G1)で「迷わず逃げることを選択」したのは、勝ち切ることが何よりも重要となる「G1だから」だそうだ。

 しかし、2016年の福永騎手は「それ」を前哨戦のG2でやってしまったということになる。それが結果的に様々な要素と重なり、最悪の結果につながったのが、あの年のスプリンターズSなのだろう。

「ビッグアーサー、前が壁」という実況と共に、福永騎手の“黒歴史”として今でも語り草となっているレース。無論、後に本人が述べている通り、最後の直線の進路取りの選択ミスが最も直接的な敗因であることは間違いない。

 だが、当時の細江さんの発言や、今回の川田騎手のコラムを参考する限り、前哨戦のセントウルSの勝ち方がすでに「選択ミス」だったのかもしれない。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

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