JRAが藤沢厩舎の「馬なり調教」を全否定!? 前走「22秒3差」大敗の良血馬が復活の手掛かり! 激走は去勢効果か、それとも……
12日、中山競馬場で行われた京成杯AH(G3)は、7番人気のカテドラルが直線鋭く伸びて勝利。14度目の挑戦で重賞初制覇を飾った。
クビ差の2着にはコントラチェックが逃げ粘り、1番人気グレナディアガーズは直線外から迫ったが、3着を確保するのが精いっぱいだった。
8着までが0秒4差以内という、ハンデ戦らしい大混戦となった今年の京成杯AH。そんな中、マルターズディオサに次ぐ上がり3ハロン2位の末脚を駆使して0秒3差の6着に食い込んだのがレイエンダ(セン6歳、美浦・藤沢和雄厩舎)だった。
ダービー馬レイデオロの全弟としてデビュー前から注目度が高かった良血馬。デビュー勝ち直後に骨折する不運もあってクラシック3冠には不参戦だった。それでも4歳夏にエプソムC(G3)を制覇し、大器の片鱗をのぞかせた。
その後はマイルを中心に重賞路線を歩んでいたが、連覇を狙った昨夏のエプソムCで10着に敗れると、これをきっかけに極度のスランプに陥ってしまう。
今年4月のダービー卿CT(G3)まで6戦中4戦で2桁着順に沈み、前走はスタート直後に異常歩様を見せるというアクシデントもあって、1着馬になんと22秒3差という惨敗を喫した。
その後「引退」の2文字もちらつく中、陣営は去勢手術で立て直しを図ることに。そして迎えた5か月ぶりの実戦で、久々に見せ場たっぷりの走りを披露した。
「道中は後方インで脚をため、絶好の手応えで直線を向きました。しかし勝負どころで前が詰まってしまい、鞍上が追えなくなる場面も。その後も進路を内に切り替えるロスがありながら僅差の6着。直線がスムーズなら3着の可能性はあったと思いますよ。
好走の要因として去勢効果も考えられますが、それ以上に最終追い切りがいい刺激になったのではないでしょうか」(競馬誌ライター)
レイエンダを管理する藤沢厩舎は、普段から馬なり中心の調教で、速い時計はほぼ出さないことで知られる。しかし、今回レイエンダには平地調教再審査が課されていたため、最終追い切りの指示はJRA側から出されていた。
レースでも手綱を取った津村明秀騎手によると、「馬場の真ん中を通り、一杯に追って(5ハロン)70秒を切るように」という指示が出ていたという。
美浦北Cのダートコースで行われた走路試験兼、最終追い切りは、藤沢厩舎ではあり得ないほど一杯に追われた。これを見届けた藤沢調教師は「(普段は)馬なり調教ばかりだからびっしり追われて、(レイエンダも)びっくりしたみたい」と一言。この言葉からも、藤沢厩舎の普段の調教がいかに緩いかが分かるだろう。
「いつもとは違う調教パターンで、レイエンダにスイッチが入ったのかもしれませんね。藤沢調教師としては、長きにわたってこだわってきた馬なり調教が否定された気分になったかもしれません……」(同)
約半年後に定年引退を迎える藤沢調教師。復活の手掛かりをつかんだレイエンダの次走は果たしてどんな仕上げで臨むのだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。