凱旋門賞苦戦を「高速馬場」のみに求めるのは的外れ!? 「悲願」といわれながら国内は真逆の矛盾も、それだけとは言い切れない理由
3日夜、フランスのパリロンシャン競馬場で開催された凱旋門賞(G1)は、ドイツ馬のトルカータータッソ(牡4、独・M.ヴァイス厩舎)が勝利した。日本で発売された単勝の払戻は11050円という超大穴の激走。第100回のメモリアル開催は、単勝万馬券の馬が勝つ大波乱で幕を閉じた。
ラブが熱発で取消して、14頭立てで行われた芝2400mのレース。前哨戦のフォワ賞(G2)で逃げたディープボンドが控えたこともあり、序盤は武豊騎手のブルームがレースを先導した。道中でアダイヤーが先頭を奪い、クロノジェネシスが2番手に上がると、ブルームは3番手をキープ。隊列そのままに最後の直線に入る。
抜け出しを図ったアダイヤーをタルナワとハリケーンレーンが残り100m手前で交わして2頭が叩き合い。このまま一騎打ちかと思われたところを、外から一気に交わし去ったのが伏兵のトルカータータッソだった。
ドイツ調教馬の凱旋門賞勝利は、2011年に10番人気で制したデインドリーム以来となる10年ぶり。不良馬場で開催された昨年は、同じくドイツ馬のインスウープがソットサスの2着に入ったが、同馬が優勝した昨年の独ダービー(G1)で2着だったのがトルカータータッソ。結果論ではあるが、2頭の能力が遜色なかったことに注目が集まっていたなら、ブービー人気のノーマークとまではならなかったかもしれない。
日本馬はクロノジェネシスが7着、ディープボンドが最下位の14着。武豊騎手がコンビを組んだブルームは11着と残念な結果だった一方、勝ち馬のトルカータータッソを管理するヴァイス師は意外なコメントも出していた。『日刊スポーツ』が報じた情報によれば、「日本へ連れて行くかもしれません」と、次走にジャパンC(G1、11月28日・東京競馬場)に参戦するプランもあるようだ。
だが、参戦は不透明とはいえ、日本馬がロンシャンのタフな馬場に苦しんだように、ホームとアウェイが逆になれば、トルカータータッソが時計の出やすい軽い馬場が特徴である日本の馬場に適応できるか否かは、懐疑的な見方をせざるを得ない。
これには元JRA騎手の安藤勝己氏もレース後に自身の公式Twitterにて「ある意味、挑戦を続けてれば実るって証明かもしれんけど、毎年のことながら日本馬とすれば異種目」「凱旋門賞、改めて変な魔力があるレースやわ」と触れ、日本で行われているレースとの違いを再認識させられたことを思わせるコメントを残している。
やはり、今年も日本勢が総崩れした敗因は、ロンシャン特有のタフな馬場なのだろうか。ただ、こちらに対して馬場の違いだけではないといった意見もある。
「馬場に敗因を求める関係者も多いように、日本の馬場と向こうの馬場との違いは確かにあるでしょう。とはいえ、この1点のみをクローズアップしてしまうのは早計でしょう。過去、凱旋門賞で日本馬は2着に4回入っていますが、好走した年はいずれも重や不良馬場でしたから。
現役時代の同馬やオルフェーヴル、エルコンドルパサーら三冠クラスの馬が、勝利寸前の好走を演じました。明確な答えがあるとはいえませんが、前哨戦を使うなり、長期滞在するなり、他にも打開策はまだありそうです」(競馬記者)
実際、凱旋門賞後に行われたフォレ賞(G1)に出走したエントシャイデンが3着に入る健闘を見せたことも、一概に馬場のみが敗因と言い切れない理由のひとつとして成立するだろう。
5着に敗れた前走のパン賞(G3)から大きく前進を見せた同馬も、話題を集めたスノーフォールにしても、一般的に力の要る馬場で好走の可能性が低いとされるディープインパクト産駒である。
凱旋門賞が長らく日本競馬の悲願といわれながら、日本の競馬場でレースに使われている馬場の高速化が加速している矛盾には否定的な意見も多いが、少なくとも日本馬の凱旋門賞攻略にはまだまだ一考の余地が残されているのではないか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。