JRA【秋華賞(G1)展望】古馬「撃破」ソダシ牝馬2冠へ視界良しもユーバーレーベンは「状態不安」で黄信号!? 「12冠ベビー」は惜敗続きにピリオド打てるか
17日、レース史上初めて阪神競馬場で行われる秋華賞(G1)は、フルゲート16頭に22頭がエントリー。収得賞金1500万円の5頭が除外対象となっており、1600万円の4頭が3枠を巡って抽選対象となっている。
最大の注目はやはり白毛のアノ馬だろう。昨年暮れに2歳女王に輝き、4月に桜花賞(G1)を制したソダシ(牝3歳、栗東・須貝尚介厩舎)だ。
無敗の2冠を狙ったオークス(G1)は、序盤から厳しい競馬を強いられ、初黒星となる8着に終わった。巻き返しを誓った8月の札幌記念(G2)で古馬を撃破し、「クロフネ産駒は2000m以上の重賞を勝てない」というジンクスを覆した。
2着に破った相手が今年に入って完全復活を果たしたラヴズオンリーユーだったこともソダシの評価を引き上げている。前半3ハロン34秒9という厳しいペースを2番手で追走する強気な競馬。ブラストワンピースに早めにプレッシャーをかけられ、3コーナーで早々と先頭に立つと、直線でも後続に抜かせず、しぶとく粘り込んだ。
52kgという斤量とやや時計がかかる馬場も味方につけたが、秋華賞と同じ距離を経験できたことは大きい。また本番まで約2か月というゆとりあるローテーションも理想的だろう。
阪神JF(G1)と桜花賞を制した阪神コースは得意。好位から早めに押し切るタイプのソダシにとって、内回りに替わるのも追い風となりそうだ。
桜花賞と秋華賞で牝馬2冠を達成すれば、07年ダイワスカーレット以来14年ぶりとなる。今度はクロフネ産駒として初めて2000m以上のG1勝利を挙げられるだろうか。
ソダシと同じく牝馬2冠がかかるユーバーレーベン(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)も注目を集める。こちらは15年ミッキークイーン以来となるオークスと秋華賞の2冠を狙う。
昨年6月に2歳新馬戦を勝ち上がったユーバーレーベン。阪神JF3着など惜敗続きで2勝目をなかなか挙げられなかった。
しかし、3歳牝馬には過酷な東京2400mのオークスでようやく本領を発揮。M.デムーロ騎手の見事な手綱さばきもあって、3月に他界した岡田繁幸さんにクラシック初勝利を捧げた。
だが、レース後には左前屈腱部に腫れと熱感を持っていることが判明。幸い大事には至らなかったが、前哨戦を使わず、直行で秋華賞を迎える。
美浦には9月中旬に帰厩。管理する手塚師は「脚元は大丈夫だが、秋華賞はぶっつけで厳しい戦いになりそう」と本音を吐露。1週前追い切り後にも「時計が遅い。もうちょっとやりたかった」と状態に不安を抱えての阪神遠征となりそうだ。
もう1頭の有力馬アカイトリノムスメ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)もぶっつけで本番に臨む。
春は桜花賞で4着、オークスでは2着に好走したが、G1タイトル奪取には至らず。最後の1冠をクイーンC(G3)以来となる戸崎圭太騎手とのコンビで狙いにきた。
ひと叩きするプランもあったが、8月下旬には直行での参戦が決定。順調に追い切りを重ね、1週前には美浦南CWで自己ベストを更新する好タイムを叩き出している。
オークスから直行した馬は、18年のアーモンドアイから3年連続で秋華賞を制覇している。中間の順調さではユーバーレーベンよりアカイトリノムスメが明らかに上だが、オークス直行組の4連覇もあるか。
ディープインパクトとアパパネという三冠馬を両親に持つ「12冠ベビー」が惜敗に終止符を打って、虎視眈々と最後の1冠を狙う。
前哨戦で福永祐一騎手を背に勝利したファインルージュとアンドヴァラナウトも楽しみな存在だ。
桜花賞で3着に好走したファインルージュ(牝3歳、美浦・岩戸孝樹厩舎)。続くオークスでは距離もやや長かったのか11着に敗れ、評価をやや落としていた。
秋初戦の紫苑S(G3)には、桜花賞からコンビを組む福永騎手を背に2番人気で臨み、直線鋭く伸びて完勝。今回は未勝利戦とフェアリーS(G3)で手綱を取り2戦2勝のC.ルメール騎手との再タッグで大一番に臨む。
福永騎手が本番で騎乗するのはデビュー戦から手綱を取ってきたアンドヴァラナウト(牝3歳、栗東・池添学厩舎)。夏の新潟で1勝クラスを勝ち、続くローズS(G2)を重賞初挑戦で制覇した上がり馬だ。勝ち上がりに3戦、2勝目を挙げるのに5戦を要した遅咲きだが、目下の充実度は目を見張るものがある。
祖母にエアグルーヴがいる良血馬だけにG1初挑戦での戴冠があってもおかしくない。
春2冠はともに5着だったアールドヴィーヴル(牝3歳、栗東・今野貞一厩舎)。必勝を期して臨んだ秋初戦のローズSは1番人気を裏切って3着に敗れたが、一度叩かれての上積みに期待がかかる。
前走の佐渡S(3勝クラス)で良血ゴルトベルクを相手にせず、2馬身半差の快勝を収めたアナザーリリック(牝3歳、美浦・林徹厩舎)も怖い存在だ。デビューから手綱を握る津村明秀騎手がその末脚をうまく引き出せば、一発があっても驚けない。
この他には、紫苑Sで権利を獲った2頭も侮れない。前哨戦2着のスルーセブンシーズ(牝3歳、美浦・尾関知人厩舎)は初の遠征がカギを握る。
ミスフィガロ(牝3歳、栗東・友道康夫厩舎)は、12番人気の紫苑Sで3着に追い込んだ。ソダシ、アカイトリノムスメに続く金子真人オーナー3本目の矢がさらなる大舞台でアッと言わせるか。
3歳牝馬最後の1冠を手にするのは果たしてどの馬になるのか。発走は17日15時40分の予定だ。