横山典弘騎手が若手騎手に「あの乗り方はやめろ」岩田康誠騎手らが実践する「お尻トントン」は、競走馬の負担になるだけ?
その頃から岩田騎手だけでなく、蛯名騎手や川田騎手といった東西のトップジョッキーが真似し始めたことで騎手界の”トレンド”になりつつあった「お尻トントン」。だが、その一方で見た目が美しくないことや、騎乗馬に必要以上に負担が掛かるのではないかと考える見方も絶えない。
通算1918勝を上げ、2015年に引退した藤田伸二元騎手は自身の著書の中で、岩田騎手の騎乗フォームに関し、見た目が不恰好で「馬の背中を痛めてしまう」という理由から「絶対に認めたくない」と記している。大きな結果を残している一方で、こういった意見があることもまた事実なようだ。
「『お尻トントン』が見た目上、不格好なのは確かですが、それが馬に対して必要以上の負担になっているのかを科学的に証明することは難しいと思います。ただ逆に、常に勝敗が問われる弱肉強食が競馬の世界ですし、そんな厳しい世界で『勝つためにベストを尽くす』というもの自然な発想なのかもしれません。
もちろん、馬の背中を痛めてしまう可能性が高まるという話も理解できます。ただ、実際にどの程度影響があるのかは定かではないですし、勝ってなんぼの世界で『それで結果が出るのなら』と考える人がいることにも頷けますね」(競馬記者)
横山典騎手から「お尻トントン」をやめるようにアドバイスを受けた菊沢騎手にしても、自分の重心が定まっていない中で大きなアクションをすることが、馬の負担になっていたと「お尻トントン」そのものを否定しているわけではない。
逆に述べれば、正しい重心での騎乗さえ確立できていれば「お尻トントン」で馬に掛かる負担は最小限に軽減され、さらなる推進力が生まれる可能性があるということなのだろう。
ただ、その一方で昨年壮絶なリーディング争いを繰り広げた戸崎圭太騎手とC.ルメール騎手、そして現在のリーディングを牽引している田辺裕信騎手や武豊騎手らが、以前からあるスマートな騎乗法で結果を残していることもまた事実だ。