JRA エリザベス女王杯(G1)クラヴェルの3着は「必然」だった!? 横山典弘「今まで最高。一番の仕上がり」に加えてリーチがかかっていた“珍記録”
14日、阪神競馬場で行われたエリザベス女王杯(G1)は幸英明騎手の10番人気アカイイトが優勝。
3連単の配当は約339万円と中央G1の3連単高配当ランキング第6位にランクインする波乱だった。だが、10番人気が勝ったとはいえ、2着・3着にも人気薄の馬が入らないとこれほどまで大きな払戻とならない。
そこで、339万馬券に一役買ったのが9番人気で3着に食い込んだクラヴェル(牝4歳、栗東・安田翔伍厩舎)だ。レースでは後方で脚を溜めると、直線は馬群を縫って抜け出て、ゴール前で3着へ浮上した。
鞍上の横山典弘騎手は「今までで最高、一番の仕上がりだったし、よく厩舎スタッフがここまで持ってきてくれた。ありがたい」と、クラヴェル陣営を賞賛。
続けて「みなさんが思っているよりとても難しい、特殊な馬。すごい脚を使っているとみられるが、一つ間違えば掲示板もなかった。勝てなかったが、いい仕事はできた。また頑張ってもらいましょう」と、上手く噛み合っての3着であることを強調した。
横山典騎手は勝敗に関わらず、レース後のインタビューであまり多くを語らないことで有名だ。ただ、今回は文字数で100文字以上を話している。そこには安田翔厩舎との深い間柄が関係しているそうだ。
「安田翔師はクラヴェル以外でも有力馬を横山典騎手へ任せています。重賞やG1で好走したワンダーリーデルやキングオブコージがそうですね。
そういった関係から、横山典騎手も陣営の渾身の仕上げに意気を感じていつもより饒舌になったのでしょう」(競馬誌ライター)
安田翔師はクラヴェルについて「460キロを切るくらいでちょうどいいと思います」と、レース前にコメント。そして、クラヴェルの当日の馬体重は456キロと望み通り。名手が手放しで褒めることにも合点がつく。
だが、それほど状態が良くても勝てなかった。エリザベス女王杯まで重賞3戦連続馬券圏内ながら未勝利の「善戦マン」であるため、勝ち味に遅いタイプともいえそうだが、今回の3着はある意味必然の“定位置”だったのかもしれない。
実はクラヴェルが3着に入ったことでエリザベス女王杯『親子3代3着』と珍しい記録が生まれたのだ。クラヴェルの祖母は06年の3着馬ディアデラノビア。そして母のディアデラマドレは14年の3着馬である。
「親子3代」で思い出すのが、メジロアサマ・メジロティターン・メジロマックイーンの天皇賞・春(G1)親子3代制覇だ。ブラッドスポーツと呼ばれる競馬でも、親子3代制覇は難しく、日本競馬の主流であるディープインパクトの系統も未だに達成していない。
更に3頭とも3着に入ったのが同じ4歳時。同じ年齢で同じ着順というのは、偶然にしても出来過ぎている。もしかするとレース前に知っていて、クラヴェルを3着に固定した3連単馬券で一獲千金を狙ったファンがいても不思議ではないだろう。
「ディアデラノビア一族の『親子3代』伝説はまだ残っています。実はディアデラノビアとディアデラマドレは共に愛知杯(G3)を優勝しています。クラヴェルが来年の愛知杯へ出走して勝てば『親子3代制覇』になりますから、忘れないでおきたいですね」(同)
愛知杯も親子3代制覇となり、その背に横山典騎手が跨っていたなら今度はテレビの前で珍しく口達者な姿が見えるかもしれない。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……