JRAマイルCS(G1)池添謙一「すいません」代打失敗グレナディアガーズはなぜ惨敗したのか。マイル界の次代を担う「3歳勢」の明暗を分けたものとは
21日、阪神競馬場ではマイルCS(G1)が行われ、中団後方からレースを進めた1番人気グランアレグリアが優勝。史上6頭目の当レース連覇を達成し、有終の美を飾った。
2着に2番人気シュネルマイスター、3着には5番人気ダノンザキッドが入線。さらに逃げた7番人気ホウオウアマゾンが5着に粘り込み、出走していた3歳馬5頭のうち3頭が掲示板を確保した。
一方、3歳馬の1頭で4番人気に支持されていたグレナディアガーズは人気を大きく裏切る13着に惨敗。池添謙一騎手を背に予想通りの好位で競馬を進めたが、直線伸びを欠き失速し、初めて掲示板を外すという結果に終わった。
「返し馬の雰囲気やゲート裏までは落ち着いていて凄くよかったです。でもレースでは壁も作れず、力んで走らせてしまって上手く乗れなかったです…すいません」(原文ママ)
レースから約2時間後、池添騎手は自身のTwitterにそう書き込み、惨敗した悔しさをにじませた。
「この馬としては絶好の位置を取れたのですが、池添騎手の言葉通り前に壁を作って脚を溜めることができませんでした。スローで流れたこともあって、折り合いも欠いてしまいましたね」(競馬記者)
結果的にグレナディアガーズは「前に壁」を作れなかったことが凡走の一因となったが、正反対に馬券に絡んだ3歳馬2頭は「前が壁」を乗り越えての激走だった。
川田将雅騎手騎乗のダノンザキッドは道中外目の8番手あたりを追走。4コーナーを回ったところで目の前にサウンドキアラとグレナディアガーズの2頭が壁になる形で立ちはだかった。しかし川田騎手はほぼ減速することなく2頭の間にできた狭いスペースをこじ開けると、しぶとく末脚を伸ばしてインディチャンプとの3着争いを制した。
一方、ダノンザキッド以上に危うかったのは横山武史騎手騎乗のシュネルマイスターの方だ。
道中は内目の8番手を追走。4コーナーを迎えたところでは余裕綽々の手応えだったが、目の前にはサリオスとインディチャンプが壁になっていた。さらに外からダーリントンホールに被せられそうになり、万事休す。しかし、インディチャンプがやや内に刺さった瞬間に進路を見つけると、残り200m地点から鋭く伸びて2着に飛び込んだ。
「道中『前に壁』を作れずに掛かってしまったグレナディアガーズに対し、シュネルマイスターとダノンザキッドは最後の直線で『前に壁』ができる窮地を乗り越えました。競馬では頻繁に耳にする『前に壁』ですが、3歳馬3頭は違う形で明暗を分けることになりましたね」(競馬記者)
勝ったグランアレグリアはこれで現役を終え、繁殖牝馬として第二の馬生を歩み始める。次代のマイル界は、シュネルマイスターを中心とした3歳世代が担っていくことになっていくのだろう。そう予感させる今年のマイルCSだった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。