JRAジャパンC(G1)「信じる者」は救われる!? シャフリヤールより魅力、ユーバーレーベン陣営の勝負度合い
28日、東京競馬場で行われるジャパンC(G1)はグランドグローリー、ジャパン、ブルームといった外国馬3頭が出走を予定している。
国際レースでありながら、外国馬の優勝は2005年のアルカセットを最後に、近年は日本馬が15連勝中。来日する馬のレベル低下も相まって、19年には創設39年目にして史上初めてとなる外国馬の参戦がゼロの非常事態もあった。
今年はこのレースがラストランとなるコントレイル一強ムードが色濃いが、世界のA.オブライエン厩舎が送り込むジャパンとブルームは、コントレイルが避けた凱旋門賞(G1)に出走した実力馬でもある。日本でのホームだからと油断をしていると、手痛いしっぺ返しを受けるかもしれない。
とはいえ、世界的にも速い時計の決着が多く、スピードを求められる日本特有の高速馬場での開催は日本勢にとって大きなアドバンテージだ。外国馬には一目を置くとして、打倒コントレイルの期待ができそうな馬を探ってみたい。
真っ先に思い浮かぶのは今年のダービー馬シャフリヤールの存在だろう。同馬は日本ダービー(G1)で無敗二冠を目論んだエフフォーリアの野望を粉砕したほどの実力の持ち主である。
天皇賞・秋(G1)でそのエフフォーリアがコントレイルを撃破したことを考えれば、コントレイル相手でも決して引けを取らないはず。戦前の下馬評で対抗の評価を受けているのも分かる話だ。
ただ、シャフリヤールには負の運命を背負っている“ダービー馬”ということにマイナスイメージが付きまとう。
今年の出走馬に4世代のダービー馬が揃うことで話題となっているものの、8歳馬のマカヒキや6歳馬ワグネリアンはダービー以降に長らく低迷していた馬。主役を務めるコントレイルにしてもダービー以降に連敗している現状は決して他人事ではない。
さらにシャフリヤールは今秋の神戸新聞杯(G2)で単勝1.8倍の大本命に支持されながらも勝ち馬から5馬身の後れを取る大敗を喫したばかり。青写真通りに一変するとは限らないだろう。
これに対し、同じ3歳でも牝馬のユーバーレーベン(牝3、美浦・手塚貴久厩舎)は、案外面白そう。
前走の秋華賞(G1)では5番人気に支持されたが、後方のまま見せ場なく13着に大敗。同世代の牝馬相手に敗れたことは気になるものの、オークス以来の直行だった上に、屈腱炎明けで調整も不十分な状況だった。
最終追い切りでは悪くない動きを見せたものの、実戦となると勝手が違ったか。やはり、この凡走には管理する手塚師もレース前に「何とか間に合った」とコメントしていたように、中身が伴っていなかったことも無関係ではないはずだ。
だが、休み明けを一度使われた効果はしっかりと表れた。3頭併せで行われた美浦Wコースの最終追い切りで外ムスコローソと併入し、内アルビージャには半馬身先着。タイムも5ハロン68秒0、ラスト1ハロン11秒9なら上々といえる。
「通常なら秋華賞の後にエリザベス女王杯(G1)に向かうケースが多いところをあえてのジャパンCというところに厩舎の本気度が伝わります。オークスを制した舞台ということは当然ながら、手塚師の本音は最初からここ狙いだったのではないかという気もしますね。
エリザベス女王杯のウインマリリンにしても泣きのコメントをしていた通りに、本調子とは思えない走りでした。先週のマイルCS(G1)では自信を隠さなかったシュネルマイスターが2着に好走したように、嘘をつけない人なのかなとも思います」(競馬記者)
公正競馬が大前提だけに、こういったものはあくまで憶測に過ぎないとはいえ、秋華賞を叩き台にして本命がジャパンCという理屈には一応の説得力はある。
過去を振り返ってみても3歳牝馬は12年にジェンティルドンナ、18年にアーモンドアイが優勝。13年には7番人気デニムアンドルビーが2着に入った。そして、先述したアーモンドアイから19年2着カレンブーケドール、昨年のデアリングタクトと、3年連続で馬券圏内の3着以内に入っている。
こういったことも考慮すると、53キロで出られることは魅力。鞍上も08年のジャパンCでウオッカ、ディープスカイ、メイショウサムソンらの強豪を相手に9番人気スクリーンヒーローで勝利したM.デムーロ騎手だけに、一考の価値はありそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。