元JRA藤田伸二氏「さすがにないわ」ジャパンC(G1)後輩騎手の“奇策”に苦言、コントレイル消して狙った本命は健闘も……。
28日、東京競馬場では第41回ジャパンC(G1)が行われ、福永祐一騎手が騎乗したコントレイル(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)が1番人気に応えて有終の美を飾った。
引退レースで大仕事を終えた福永騎手はレース直後から涙を隠さず、これにはSNSでも思わずもらい泣きしたというファンの声も多かった。
「ラストランを本当に無事終えることができて、次のキャリアに無事送り出すことができてそこが一番です」
レース後の福永騎手のコメントからも、引退レースを勝利で終えた安堵感が伝わってきた。
そんな断然1番人気に支持されたコントレイルに「無印」という評価を下していたのが、現役時代に騎手としてJRA通算1918勝を記録した藤田伸二氏だ。
この日は自身のYouTubeチャンネルで天皇賞・秋(G1)以来、約1か月ぶりとなるライブ配信を行い、ジャパンCの予想と買い目を披露。また、時折視聴者からの質問にも答えながらいつも通り進行していった。
15時に始まった配信の冒頭、藤田氏は、「思い切ってコントレイルは買っていません」と、不安材料が幾つかあることを理由として、無敗の三冠馬を買い目に入れていないことを明かした。
「藤田氏も当然コントレイルが強いことを前提に話していました。しかし、今回は『馬券を楽しみたい』というスタンスで、敢えて同馬を買い目から外して高配当を狙いにいったようですね」(競馬誌ライター)
ただ藤田氏がコントレイルの不安材料に3つの要素を挙げたが、どれも説得力のあるものだった。
まず挙げたのは2400mという距離への不安だ。「(前走の)天皇賞・秋の直線で最後苦しがって内にもたれていた」ことから藤田氏は、「コントレイルにとって2400mは長いんじゃないかな」と疑問を投げかけた。
そして、2つ目の不安として挙げたのが「負けが続いている」こと。菊花賞(G1)後も好走はしているものの、「負け癖がついてしまっている」ことに疑問を呈した。
さらに、福永騎手のお手馬であるシャフリヤールやシャドウディーヴァなどの名前を出して、「こういうとき(出走が被ったとき)は、自分が乗っていた馬に勝たれるケースが多々あるんですよ」と、元騎手としての嫌な直感を明かし、「コントレイルも絶対ではない」という結論に至ったようだ。
藤田氏はコントレイルを思い切って「消し」としたうえで、本命には「7番ルメールですね。オーソリティです」と3番人気に推されたコントレイルと同世代の4歳牡馬の名前を挙げた。
「オーソリティ本命の根拠として『東京巧者』であることと、『ルメール騎手の対応力』の2つを挙げていました。さらに世代レベルの高さを加味してシャフリヤール、前走の内容が良かったというアリストテレス、福永騎手が乗っていたシャドウディーヴァ、前走からの勢いを買ってマカヒキの4頭を三連複フォーメーションの2列目に、そして3列目にはキセキやユーバーレーベンを入れていました」(同)
コントレイルを無印とした強気の買い目だっただけに当たれば大万馬券の可能性もあったが……。結果はご存じの通り、上位人気3頭による平穏決着だった。
コントレイルが3着以内に来れば外れ確定の藤田氏。最後の直線でコントレイルが伸びてきた時点で結果を察知したのか、いつもほどの大声は出なかった。
この日のレース中、藤田氏が最も声を張り上げたのがレース中盤の1000mに差し掛かった地点だった。スタートでやや後手を踏み最後方に控えていたキセキが一気に先頭集団に進出した場面だ。
このとき藤田氏は「竜二、竜二」とキセキの鞍上・和田竜二騎手の名を連呼。続けて、「遅い。62秒2だって」とテレビ中継から伝わった1000mのラップタイムをつぶやくと、「だけど竜二。これはやり過ぎやわ。これはやってもた感じ。はい、キセキ(の目)はなくなりましたね。さすがに(この捲りは)ないわ」と和田竜騎手の奇策ともいえる騎乗に苦言を呈した。
ハナを奪い切ったキセキはそのまま4コーナーを回ったが、藤田氏の指摘通り、直線で失速。結局、コントレイルから1秒3離された10着に沈んだ。
コントレイルの優勝を見届けた藤田氏は、「まぁ、馬券はやられましたけど」と切り出すと、上位人気決着だったことを改めて確認。「ガミるくらいだったら、俺はこういう楽しい馬券の買い方のほうが好きです」と、コントレイルを無印にした予想に悔いがないことを強調した。
これまで比較的本命党だった藤田氏。今回は「コントレイル消し」という判断が裏目に出たが、今後も思い切った切り口での予想に期待したい。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。