さらば優駿たち~コントレイル、グランアレグリア、クロノジェネシス、ダノンスマッシュ、キセキ…。2021年引退馬リスト
引退レースのジャパンC(G1)を勝利で締めくくったコントレイルが、種牡馬として第2の馬生を歩むため栗東トレセンを退厩した。4歳の引退は早い気もするが、2019年に亡くなったディープインパクトの後継種牡馬として大きく期待されているだけに、 新たな門出を祝いたい。
コントレイルだけでなく、この秋はJRAを盛り上げてきた実力馬の引退ニュースが相次いだ。すでにマイルCS(G1)で有終の美を飾ったグランアレグリアや、週末の香港スプリント(G1)がラストランとなるダノンスマッシュ、そして年末の有馬記念(G1)に出走するクロノジェネシスとキセキなど、多くの馬が引退を発表している。
JRAの将来は新たな世代、そして現役を続ける古豪たちに引き継がれるわけだが、ここでは今年既に引退及び引退が決定している馬たちを紹介しよう。
■コントレイル
矢作芳人厩舎、ノースヒルズ生産。2020年に父ディープインパクトに続き無敗でクラシック三冠を達成。ホープフルS(G1)、ジャパンCを含めG1を5勝。サリオスら同世代のレベルに疑問は残るものの、引退レースのジャパンCで今年の日本ダービー(G1)馬シャフリヤールらを退けて勝利し、種牡馬としての価値を高めることに成功した。初年度の種付け料はディープインパクトと同じ1200万円でスタートとなり、期待の高さを物語っている。
■グランアレグリア
藤沢和雄厩舎、ノーザンファーム生産。デビューから2連勝でサウジアラビアRC(G3)を勝利。暮れは阪神JF(G1)ではなく牡馬相手に朝日杯FS(G1)へ出走するも3着に敗退。3歳初戦の桜花賞(G1)で圧勝。その後は安田記念(G1)でアーモンドアイを破り、スプリンターズS(G1)、マイルCSとG1レース3連勝を達成。今年に入ってもヴィクトリアマイル(G1)、引退レースのマイルCSを快勝。2000mの大阪杯(G1)と天皇賞・秋(G1)は勝利できなかったが、マイルG1の5勝の実績から、ディープインパクト産駒最高傑作のマイラーといえよう。
■クロノジェネシス
斉藤崇史厩舎、ノーザンファーム生産。日本に馴染みの少ないバゴ産駒だったが、新馬戦からその強さを発揮。阪神JF、桜花賞、オークス(G1)はあと一歩だったが、秋華賞(G1)で初G1勝利。その後は宝塚記念(G1)、有馬記念、宝塚記念とグランプリを3連勝。凱旋門賞(G1)は残念ながら7着に敗退したが、中長距離での強さは現役屈指。グランプリ4連勝の偉業を狙う有馬記念がラストラン。C.ルメール騎手がどう乗るかも興味深い。
■インディチャンプ
音無秀孝厩舎、ノーザンファーム生産。ステイゴールド産駒を代表するマイラーで、週末の香港マイル(G1)がいよいよラストラン。22戦して掲示板外は1回という堅実派。唯一掲示板外の7着に敗退した香港マイルを、引退レースに選ぶところに陣営の意気込みを感じる。福永祐一騎手に導かれ、ぜひ有終の美を飾ってほしい。
■ダノンスマッシュ
安田隆行厩舎、ケイアイファーム生産。ロードカナロア代表産駒の一頭で、アーモンドアイやサートゥルナーリアと異なりスプリンターとして名をはせた。昨年の香港スプリントで父に次ぐ親子制覇を達成。今年の高松宮記念(G1)も制し、連覇を狙う週末の香港スプリントが引退レース。川田将雅騎手の手綱捌きにも注目したい。
■ラヴズオンリーユー
矢作芳人厩舎、ノーザンファーム生産。DMMバヌーシーの初年度募集馬でいきなりオークスを勝利。その後は不振が続くも京都記念(G2)で復活の勝利を挙げ、香港で行われたクイーンエリザベス2世C(G1)を勝利。さらに日本調教馬初の快挙となるブリーダーズCフィリー&メアターフ(G1)勝利の偉業も成し遂げた。週末の香港C(G1)がラストランで、勝てば同一年度に3か所の海外G1勝利という、とてつもない快挙達成となる。
■キセキ
辻野泰之厩舎、下河辺牧場生産。もともとは角居勝彦厩舎の管理馬で、厩舎解散に伴い辻野厩舎へ転厩。2017年の菊花賞(G1)馬で、それ以降G1レースは4度の2着があるも、重賞も含めて4年以上未勝利。いよいよ有馬記念が引退レースとなり、来年は種牡馬入りが決定している。最後の一戦で“奇跡”を見せることができるか。
ワールドプレミア
■ワールドプレミア
友道康夫厩舎、ノーザンファーム生産。セレクトセールにて2億4000万円で落札され、2019年の菊花賞は武豊騎手の好騎乗により重賞未勝利ながら優勝。今年の天皇賞・春(G1)も勝利しジャパンCを目指していたが、無念の引退となった。
■カレンブーケドール
国枝栄厩舎、社台ファーム生産。3歳時はオークス、秋華賞、ジャパンCでG1・3戦連続2着。その後も牡馬相手に京都記念、オールカマー(G2)、日経賞(G2)で2着とまさにシルバーコレクター。最強の2勝牝馬だったが、脚部不安で引退が決定。母の無念は産駒に引き継がれる。
■モズスーパーフレア
音無秀孝厩舎、アメリカ産の外国産馬で、突出したスピードは現役屈指。絶対にハナを譲らない競馬で、ここまで12戦連続逃げの手を打っている。2020年の高松宮記念は、クリノガウディーの1着降着でまさかの繰り上がり優勝。週末のカペラS(G3)が引退レースとなり、ここも初志貫徹の逃げが見られるだろう。そのスピードが産駒に引き継がれることを楽しみに待ちたい。
この10頭以外にも多くの実力馬が今年すでに引退、もしくは引退が決定している。下記に挙げるのは、2021年に競走馬登録が抹消され引退した重賞勝ち馬(今年1走以上した馬のみ。地方転厩、へい死を除く)や、地方所属馬を含め年内で引退が決定している実績馬だ。
アウィルアウェイ(シルクロードS・G3)
エアウィンザー(チャレンジC・G3)
クリソベリル(チャンピオンズC・G1ほか)
サウンドトゥルー(チャンピオンズC・G1ほか)
サトノインプレッサ(毎日杯・G3)
サトノガーネット(中日新聞杯・G3)
サトノティターン(マーチS・G3)
サブノジュニア(JBCスプリント・Jpn1)
サマーセント(マーメイドS・G3)
サンデーウィザード(新潟大賞典・G3)
サンライズソア(平安S・G3ほか)
シュウジ(阪神C・G2ほか)
ショウリュウイクゾ(日経新春杯・G2)
スマートオーディン(京都新聞杯・G2ほか)
セイウンコウセイ(高松宮記念・G1ほか)
センテリュオ(オールカマー・G2)
ダノンプレミアム(朝日杯FS・G1ほか)
テリトーリアル(小倉大賞典・G3)
デンコウアンジュ(愛知杯・G3ほか)
トラスト(札幌2歳S・G3)
ノブワイルド(オーバルスプリント・Jpn3)
パフォーマプロミス(アルゼンチン共和国杯・G2ほか)
ブラックホール(札幌2歳S・G3)
プリモシーン(東京新聞杯・G3ほか)
プリンシアコメータ(レディスプレリュード・Jpn2ほか)
マテラスカイ(プロキオンS・G3ほか)
ムイトオブリガード(アルゼンチン共和国杯・G2)
ヨカヨカ(北九州記念・G3)
リバティハイツ(フィリーズレビュー・G2)
ロジクライ(富士S・G3)
いずれもこれまでJRAや地方交流重賞を盛り上げてきた馬で、多くの競馬ファンが馬券でお世話になったはず。今後は種牡馬や繁殖牝馬、さらに乗馬や功労馬として余生を過ごしてほしい。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。