JRA 「勝てない1番人気」がC.ルメール騎乗で大変身!? 「16年ぶり」不名誉な記録を達成した馬が“キャラ”脱却したワケ
11日、中京競馬場で行われた9Rの3歳上1勝クラスは、C.ルメール騎手のボーデン(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)が勝利した。
道中は中団を追走。最終コーナーで上手く外に出されて、一気に3番手まで浮上すると、最後は粘り込みを図る前の2頭をしっかりと捉えて、単勝1.4倍の支持に応えた。
レースを終えたルメール騎手は「3~4コーナーで外に出してから段々と加速していった。人気通り強かった」と、同馬の走りを高く評価。人気はファンが作り出すものであるが、ルメール騎手も納得の1番人気の走りをしてくれたのではないだろうか。
一方、ボーデンを1番人気にしたファンは内心「やっと人気通り走ってくれた」と、思っているかもしれない。それもそのはず、ボーデンはこれまで1勝クラスの身で重賞を含めて6戦連続1番人気となっているのだ。
ボーデンが初めて1番人気となったのは、1月30日に行われた東京の3歳未勝利(芝1800m)。前走の中山の新馬戦で勝ち馬と僅差の2着へ好走していることが評価されて、単勝1.7倍の圧倒的な支持を得た。そしてファンからの高い期待に、2着へ6馬身差をつける圧勝と1分45秒2の好時計で応えている。
未勝利戦のインパクトの強さが影響してか、続くスプリングS(G2)でも重賞好走馬を押しのけて1番人気に。だが、重馬場が災いしてか3着に敗れてしまう。
その後、右後肢にフレグモーネを発症していることが判明し、春のクラシックを回避。夏場に復帰して、武藤雅騎手へ乗り替わってラジオNIKKEI賞(G3)へ出走すると、ここでも1番人気になる。しかし、スタートで出負けしてしまい、流れに乗れず6着と人気を裏切ってしまった。
そんなボーデンが不名誉な記録を打ち立ててしまったのが、2走前にあたる9月の3歳上1勝クラスだ。
条件戦から仕切り直しとなった同馬は、重賞で1番人気に支持された馬だけあって、またもや馬券の中心に。スポーツ紙や専門紙も軒並み「◎」が並んだ結果、単勝1.1倍と断然の人気を集めた。
オッズから「絶対に負けられない」レースとなったボーデンだが、ラジオNIKKEI賞同様にスタートで後手を踏み、後方4番手と後ろからの追走を強いられた。徐々に位置を上げて先頭を射程圏内に入れようとするも、4コーナーで前の馬が後退した影響で追い出しが遅れるアクシデントが発生。直線で懸命に追い上げたものの、前の馬が止まらず4着が精一杯だった。
単勝1.1倍の馬が着外へ敗れたのは、3年ぶり。また、未勝利戦を除くと、2005年4月2日の阪神8Rのアドマイヤレオンが6着に敗れて以来、16年ぶりの珍事だった。
前走となった先月の3歳上1勝クラスでも、1番人気の単勝1.7倍へ推されながら2着に敗戦。もはや「勝てない1番人気」のキャラが定着してしまったため、今回も単勝1倍台のオッズの割に「また取りこぼすのでは」という心配の声がネット上で上がっていたほどだ。
しかし、蓋を開けてみれば、1・1/4馬身差の快勝。勝利へ導いたルメール騎手の手腕が評価された一方、それまで同馬を勝たせてあげられなかった騎手にとっては複雑な勝利となったかもしれない。
「毎回直線で追い込んでくるのですが、どうもエンジンの掛かりが遅く切れる脚がありません。そのためか陣営は今回、初めて2000mへ距離を延ばしましたが、それが功を奏したのではないでしょうか。
ただ、条件が違ったとはいえ、スタートが苦手なボーデンで五分にスタートを切って早めに前を射程圏に入れたルメール騎手はお見事だったと思います」(競馬誌ライター)
ルメール騎手はレース後の談話で「上のクラスでもやれそう」と、ボーデンの能力の高さを強調していた。「勝てない1番人気」のキャラを脱却した未完の大器が、いよいよ能力全開となることに期待したい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……