福永祐一「鎖骨骨折」だけでなく香港馬2頭が予後不良、阪神JFの裏で今年の香港スプリント(G1)は大惨事
12日、シャンティイ競馬場で行われた香港スプリント(G1)は、B.シン騎手のスカイフィールドが優勝。日本の馬券販売で9番人気の伏兵が勝利したことにより、馬連は万馬券の決着となり、3連単の払戻は30万円を超える波乱となった。
ただ、そんな波乱の決着以上に注目を集めたのが、レースの4コーナーにおける事故だった。
現地時間では14時40分の発走も、香港と日本の時差は約1時間ということもあり、電撃のスプリント戦は、ちょうど阪神JF(G1)と同じタイミングで始まった。2歳女王決定戦を観戦したファンも香港のレースを気にしながらの観戦となった訳だが、衝撃的なシーンを目撃することとなる。
香港馬コンピューターパッチが緩みないペースを刻み、勝負が後半へ差し掛かる場面。3番手のアメージングスターが突如バランスを崩して転倒すると、すぐ後ろを追走していたラッキーパッチ、ナブーアタック、ピクシーナイトが相次いで巻き込まれて競走を中止するアクシデントが発生したのだ。
また、父ロードカナロア以来の同レース連覇を狙ったダノンスマッシュは、間一髪で落馬こそ免れたものの、落馬した馬たちの煽りを受けて外へ大きく回避。何とか無事にゴール板を通過したが、ラストランの舞台で勝ち馬から約70馬身差離れた8着というほろ苦い結果に終わってしまった。
日本馬で唯一の馬券圏内の2着だったレシステンシアも例外ではない。幸い、他馬に比べて影響は小さかったこともあり、体勢を立て直してからの直線で猛然と追い込んで日本馬の意地を示した。
当日の香港では香港スプリントのほか3つのG1競走があった。グローリーヴェイズが香港ヴァーズ、ラヴズオンリーユーが香港カップを優勝し、それぞれが栄冠を手にしたとはいえ、SNSのトレンドは、瞬く間に香港スプリント一色となった。。それとともに、被害に遭ったピクシーナイトに騎乗して落馬した福永祐一騎手の容態を心配する声も多かった。
同馬を所有する「シルク・ホースクラブ」は、レース当日の16時17分にTwitterで中間の状況を発信。ピクシーナイトの命に別条はない旨を報告し、ファンからは安堵の声が漏れた。
しかしピクシーナイトも無傷では済まなかったようだ。後に行った検査で、左前膝の骨折など複数箇所を負傷していることが判明し、予断を許さない状況が続いている。
また、鞍上の福永騎手も意識はあるが、左鎖骨を骨折するなどの大怪我を負って、現在は現地の病院へ入院中という情報も入ってきた。
日本の人馬が、無事だったことは、不幸中の幸いだったとはいえ、アメージングスター・ナブーアタックの2頭が予後不良となる深い傷跡を残した落馬事故。世界中の注目が集まった中で、想定外の大惨事となってしまった。
「香港ジョッキークラブ」のブレスゲスCEOは、会見で「事故が発生した香港スプリントでは不幸で悲劇的な事象がありました。負傷した騎手にお見舞い申し上げます。このようなアクシデントは誰も見たくありません。オーナーと馬たちにもお見舞い申し上げます」と、悲痛な表情で述べた。
日本馬2頭が勝利した快挙の裏で、このような想定外のアクシデントに見舞われてしまったことは非常に残念な限りだ。負傷した福永騎手を含め、日本馬全頭が無事に帰国できることを祈りたい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……