JRA「ハマの大魔神」が逆襲開始!? 疑いの声すら出たシュヴァルグラン全妹の「ラスト10秒9」、有馬記念(G1)前日デビューへ鞍上はアノ男
今からちょうど1か月前、本サイトでは「ハマの大魔神」こと佐々木主浩オーナーが直面する危機を取り上げた。
少数精鋭ながらも驚異の相馬眼で3頭ものG1馬を所有してきた佐々木氏だが、今年は僅か1勝(11月17日時点)と不振に陥っていること、そして期待の2歳馬グラヴィタスが蹄葉炎を患い、デビュー前に登録抹消されたことなどを伝えた。
そんな佐々木氏は、この1か月間でヴァルコスをステイヤーズS(G2)に、ディヴィーナを自己条件の1勝クラスに出走させ、前者は3番人気で8着と期待を裏切ったが、後者は見事1番人気に応えて勝利した。
ヴィルシーナの3番仔として、デビュー前から期待の大きかったディヴィーナの2勝目は佐々木氏にとって実に6か月半ぶりの勝利で、喜びもひとしおだっただろう。馬体重は410kg台とまだ成長の余地を残し、今後体質が強化されてくれば更なる飛躍を遂げる可能性も十分あるはずだ。
この勝利で、1か月前に565位だった馬主リーディングは472位に上昇し、反撃態勢を整えている。そして、前回の記事で逆襲の切り札になり得る存在として名前を挙げたアノ馬のデビュー日も決定した。
その馬の名はイヴィステラ(牝2歳、栗東・友道康夫厩舎)。父ハーツクライ、母ハルーワスウィートなので、全兄がシュヴァルグラン、半姉にヴィルシーナとヴィブロスという3頭のG1馬がいる血統馬だ。佐々木氏の期待が大きいのは言うまでもないだろう。
出走を予定しているのは有馬記念(G1)の前日、25日(土)の阪神2歳新馬(芝1800m)で、注目の鞍上は短期免許で来日中のC.デムーロ騎手が務める。
1週前となる15日(水)には栗東CWで同騎手とコンタクトを取り、3頭併せを敢行した。計時したのは6ハロン84秒2と、全体時計はまずまずだったが、驚かされたのは最後の1ハロン時計だ。古馬を含めてこの日の最速となる10秒9をマークしたのだ。
「実質強く追われたのはラスト2ハロンだけでしたが、それを11秒8-10秒9で駆け抜けました。同じ未出走の2歳馬2頭が相手だったとはいえ、置き去りにした最後の脚は将来性を感じさせました。デビューこそ少し遅れましたが、全兄シュヴァルグランと同じような切れ味を持ち合わせていると思いますよ」(競馬誌ライター)
イヴィステラがマークした10秒9というラップには、一部のファンから「10.9!?」「なにこれ!?凄くない?」など驚きの声が上がった。中には「さすがにこれはストップウォッチの押し間違いじゃないですか???」という疑いの声まであったという。
「デビュー前の2歳馬が(栗東CWで)ラスト1ハロン10秒台というのは確かに聞いたことがありません。ただ、これは今月7日から同コースで自動計測が始まったことの影響もあります。
以前は各記者がストップウォッチを使っていましたが、7日からは坂路と同じようにCWの走破タイムが即時モニターに映し出されます。特にラスト1ハロンは手動計測時より速い時計がでているようです。逆にいえば、イヴィステラの10秒9という時計がこの日の最速だったことは機械が証明してくれたことになります」(同)
佐々木氏にとってヴィブロス以来となるハルーワスウィートの仔がデビューする。一時は年内デビューも怪しかったが、ギリギリ間に合ったのは佐々木氏が全幅の信頼を寄せる友道厩舎の手腕もあるだろう。
今年2勝と不振が続いた佐々木にとってまさに逆襲の切り札となり得る存在。遅れてきた大物、イヴィステラは来年の牝馬クラシックへ向けて、いったいどんな走りを見せてくれるのだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。