JRA 池添謙一「ポテンシャルは高い」武豊は“制御不能”も代打職人で一変!? 朝日杯FS(G1)アルナシームの「価値ある」4着

ドウデュース 撮影:Ruriko.I

 19日、阪神競馬場で行われた朝日杯FS(G1)は武豊騎手の3番人気ドウデュースが優勝。競馬界のレジェンドが「基本そんなに手のかからない馬」と評した素質馬で、過去21度挑戦して1度も勝てなかった鬼門を突破してみせた。

 その朝日杯FSには、武騎手が前走騎乗し、ドウデュースと正反対の性格の馬も出走していた。それが、池添謙一騎手の8番人気アルナシーム(牡2歳、栗東・橋口慎介厩舎)だ。

 モーリス産駒で近親にシャフリヤールやアルアインがいる良血馬。7月函館の新馬戦を武騎手とのコンビで制すると、2戦目には過去の勝ち馬が続々とG1を制していることで知られる東京スポーツ杯2歳S(G2)へ出走した。

 スタートをアオり気味に出て最後方からの競馬になると、アルナシームはレース中盤から武騎手の制御が全く利かなくなってしまい、一気に先頭まで追い上げることに……。4コーナーでは後続を大きく離したが、最後は失速して6着に敗れた。

 レース後の武騎手は「ノーコントロールだった。レースに行ったらコントロールが利かなくなった。気性の問題かな」と、アルナシームの気性の難しさに言及。ファンからも、同じく前進気勢の強いメイケイエールが、引き合いに出されるほどだった。

池添謙一騎手

 今回の朝日杯FSは武騎手がドウデュースへ騎乗するため、陣営から白羽の矢が立ったのが池添騎手だった。

 同騎手は19年のマイルCS(G1)をインディチャンプや昨年の安田記念(G1)をグランアレグリアで勝つなど、「代打職人」としても有名だ。さらに「暴れん坊」の異名がある三冠馬オルフェーヴルの主戦を務め、今年のスプリンターズS(G1)ではメイケイエールをテン乗りで4着へ導くなど、性格に難のある馬を制御する技術に長けている。

 1週前や最終追い切りに騎乗して、アルナシームとコンタクトを取った池添騎手。その成果か返し馬やゲート裏でも、エキサイトせず我慢していた。

 レースでは前走同様スタートでアオって後方からの追走となったが、暴走することなく何とか折り合った。内枠で出遅れた上、折り合いに専念した分、位置取りがインの後方となってしまったのは痛恨だった。直線は荒れた内を突くしか進路が無かったものの、メンバー上がり3位の脚を繰り出して4着と健闘した。

「阪神競馬場が3ヶ月間のロングラン開催。この影響でインコースの芝が傷んでいるため、内を通った馬は、外と比べて伸びないのが目に見えていました。道中で何とか外に出せていれば、よかったのですが……。同じく内を突いて伸び切れなかった先週のナミュールと同じようなレース展開となってしまいました」(競馬誌ライター)

 ナミュールは先週同じ舞台で行われた阪神JF(G1)で、1番人気に推された馬だ。しかし、ゲートで後手を踏み、直線で荒れた内を突いてひと伸びするも、4着に敗れた。

 ナミュールのレースについて元JRA騎手の安藤勝己氏は「この馬だけは力負けやないで、桜花賞での巻き返しに期待したい」と、自身のTwitterで“負けて強し”であることを強調していた。

 アルナシームはナミュールと枠順や道中の不利の有無などの違いはあるが、レース内容は非常に似ている。ナミュールほどではないかもしれないが、安藤氏の言葉を借りればアルナシームも“負けて強し”の内容だったといえそうだ。

 そんな期待を寄せる走りを見せてくれたのは、他ならぬ池添騎手の騎乗があったからだろう。外枠だった前走に対し、今回が内枠で前に壁を作りやすい状況だったとはいえ、道中は掛からず何とか折り合った。折り合えたからこそ、直線で伸びづらい内から脚を伸ばせたのだろう。

 池添騎手はレースから約2時間半後の18時に自身のTwitterを更新し「ポテンシャルは高いと思います」と、アルナシームの素質の高さを評価した。初騎乗でこれだけ見せ場を作れた池添騎手。今後もアルナシームに継続して乗るなら、クラシックでも期待できる存在となりそうだ。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

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