「人気急落」武豊に足りないものとは何だったのか!? ホープフルS(G1)でJRA・G1完全制覇も現実味、ドウデュースの登場が意味するものとは
阪神競馬場で19日に開催された朝日杯FS(G1)は、武豊騎手が騎乗した3番人気のドウデユース(牡2、栗東・友道康夫厩舎)が制し、デビューから無傷の3連勝で2歳マイル王に輝いた。
「ついに……、嬉しいです」
競馬界のレジェンドと呼ばれる第一人者ですら、勝利まであと一歩のところで過去21度も跳ね返され続けたレースだ。
朝日杯3歳S(当時)にスキーキャプテンとのコンビで初騎乗した1994年、幻の三冠馬フジキセキの2着に敗れてから27年の年月が流れた今年。因縁の2歳G1を勝利したことで、前人未到となるJRA・G1完全制覇という大偉業も視野に入った。
「来週もあるので、リーチ一発で決めたいですね。ようやくこのレースを勝てて本当に嬉しいです」
会心の勝利を決めたレースをそう振り返った武豊騎手が未勝利のG1は、28日のホープフルSを残すのみ。
出走していれば上位人気を確実視されていたロン(牝2、栗東・石橋守厩舎)の状態が整わずに回避したことは残念だが、コンビを予定しているアスクワイルドモア(牡2、栗東・藤原英昭厩舎)もチャンスがある1頭。この勢いが来週も続くようなら、あっさり勝利しても不思議ではないだろう。
その一方で、阪神JF(G1)を3着に敗れたウォーターナビレラの4番人気、朝日杯FSを制したドウデュースの3番人気に、少々淋しさを感じずにはいられなかったというのも率直な感想である。
何しろ2頭ともデビューから無敗の馬で鞍上はあの武豊騎手なのだ。毎年のようにリーディングを獲得していた一昔前の彼なら、どちらも1番人気の支持を得た可能性も高かったのではないかと思えたからだ。
実際、競馬において「武豊人気」というものは、確かに存在していた。戦績的に多少見劣りしている馬でも、武豊騎手が乗るならそれだけで1番人気に推されることもしばしば。実力以上の過大評価となるケースも多々あったが、それでも結果を残してきたからこそのリーディングだっただろう。
しかし、2010年の毎日杯(G3)でザタイキに騎乗した際の落馬負傷を契機に低迷を経験する。この年は年間69勝に終わり、翌11年はデビュー以来最低の年間64勝。12年はそれらをさらに下回る年間56勝と苦しんだ。
自身も「武豊でも結果が出ないとこういう状況になる」と述べたこのスランプは、落馬事故からの復帰を焦るあまり、体調が不完全なままの騎乗で関係者からの信頼を失ったことも原因の一つだろう。
その結果、それまで最大の得意先でもあったノーザンファーム、社台ファームの生産馬で結果を残すことが出来ず、有力馬の騎乗依頼は他の騎手へと流れていった。キタサンブラックとの出会いは光明となったものの、外国人騎手や若手騎手の台頭により、かつてのような絶対政権ではなくなりつつある。
そんな武豊騎手にとって心の支えとなったのが、キーファーズの存在だ。武豊ファンを公言する松島正昭代表は、所有する期待馬を最優先で武豊騎手に騎乗依頼。凱旋門賞(G1)制覇の夢に対しても精力的にサポートをしている。
期待馬ドウデュースを任せ、ワールドプレミアで制した一昨年の菊花賞以来となるG1勝利を武豊騎手にもたらした最大の要因だったといえる。しかもキーファーズとしても、これがのべ4頭目のG1出走で勝利。マイラプソディで果たせなかった夢のリベンジにも成功した。
競馬界の最大勢力でもあるノーザン、社台系のバックアップを失ったレジェンドにとって、キーファーズの用意してくれる馬は何よりも頼りになるはずだ。
「僕自身G1レース自体が久しぶりなので、(ファンの皆様からの拍手は)すごく嬉しいです」
改めてファンや関係者に対し、感謝の気持ちを述べた武豊騎手。キタサンブラックの北島三郎オーナーや、キーファーズ代表の松島氏、そして馬主資格を得た藤田晋オーナーなど、武豊騎手の活躍を願う味方はまだまだ多い。
苦しい時でもたゆまぬサポートをしてくれる彼らがいる限り、武豊はまだまだ輝けるに違いない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。