JRA C.ルメール「裏切り続き」で寒波到来!? ホープフルS(G1)でも「選択ミス」の可能性十分か
絶好調だった秋G1前半戦の勢いがまるで嘘のよう。
先週の開催を終えた全国騎手リーディングで、2位の川田将雅騎手に57勝の大差をつけて独走しているC.ルメール騎手だが、12月に入ったG1戦線で予想外の苦戦を強いられている。
10月3日のスプリンターズS(G1)から始まった秋G1は、11月末のジャパンC(G1)までの7レース中6レースで馬券圏内の3着以内を確保。同じく好調だった福永祐一騎手とともに、「ルメールと福永を買っておけば的中できる」と、競馬ファンから熱い視線を注がれていた。
ところが、12月の声を聞いた途端にチャンピオンズC(G1)のカフェファラオ(4番人気11着)、阪神JF(G1)のステルナティーア(2番人気7着)、朝日杯FS(G1)のジオグリフ(2番人気5着)といいところなしの3連敗。毎度のように上位人気馬に騎乗している立場としても苦しい状況が続いている。
暑さが苦手で夏には北海道で「避暑騎乗」する名手だが、もしかすると寒さも苦手なのかもしれない。最近は特に寒くなり、近々寒波の到来も噂されているが、クロノジェネシス(牝5、栗東・斉藤崇史厩舎)に騎乗する有馬記念(G1)、コマンドライン(牡2、美浦・国枝栄厩舎)に騎乗するホープフルS(G1)でも連敗が続くようだと、ルメール騎手だけ一足早く冬の時代が訪れる可能性もあるだろう。
そんなルメール騎手にとって心強いのは女帝クロノジェネシスの存在だ。同馬は昨年の有馬記念優勝馬。宝塚記念(G1)も昨年今年と連覇し、引退レースのここを勝利すれば、史上初のグランプリ4連覇という偉業も達成する。
また今秋は、マイルCS(G1)のグランアレグリア、ジャパンC(G1)のコントレイル、香港C(G1)のラヴズオンリーユーなど、有終の美で引退の花道を飾った馬も多数。流れ的にもクロノジェネシスの勝利を後押ししてくれそうだ。
しかし、もしこれを取りこぼすようなら一転して大ピンチとなる恐れが出てくる。クロノジェネシスに比べ、ホープフルSでコンビを組むコマンドラインは、そこまで信頼できるのかとなると、そうとも言い切れないからである。
何しろ同馬はメンバー中唯一の重賞勝ち馬とはいえ、前走サウジアラビアRC(G3)の勝ちタイムも平凡だった上に、上位に入った馬が他のレースで通用しなかったため、レースレベルに疑問が残る。
朝日杯FSで騎乗したジオグリフにはマイル戦の経験がなく、レース後にルメール騎手も「距離が延びたら大丈夫」とコメントしたように、距離不足が敗因となった。すでに2頭の適性距離は逆だったのではないかという声も出ており、今回の距離延長は決してプラス材料とはいえないはずだ。
ただでさえ、レースの「選択ミス」疑惑の残った両馬だが、ホープフルS出走馬にもルメール騎手とのコンビで2戦2勝の素質馬が、ライバルとして出走を予定していることも大きな壁として立ちはだかる。
それがディープインパクト産駒のジャスティンパレス(牡2、栗東・杉山晴紀厩舎)。こちらは大本命が確実視されるコマンドラインと違って、2戦の距離はいずれも芝2000mのレース。前身であるラジオNIKKEI杯2歳SやG2時代のホープフルSを含めても、過去10年の勝ち馬は、前走距離が芝1800m組4勝、芝2000m組6勝と、未勝利の芝1600m組を圧倒していることも大歓迎といえる。
ルメール騎手が来年のダービー馬と、最大級の賛辞を送っているコマンドラインだが、難敵相手に勝利を挙げて、苦境の続く主戦の救世主となってくれるだろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。