有馬記念(G1)元JRA藤田伸二氏「スーパージョッキーになる」、不発の本命馬よりエフフォーリア横山武史に「嫉妬」が見え隠れ
26日、中山競馬場では有馬記念(G1)が行われ、エフフォーリア(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)が1番人気に応えて優勝。皐月賞(G1)、天皇賞・秋(G1)に続く3つ目のG1タイトルを獲得した。
鞍上を務めたのは22日に23歳になったばかりの横山武史騎手。道中はちょうど中団の位置取りと、いつもよりやや後ろになったが、最後まで落ち着いた手綱さばきが光った。
そんな横山武騎手の好騎乗を手放しで褒め称えたのがJRA通算1918勝を誇る、元騎手の藤田伸二氏だ。この日は15時から自身のYouTubeチャンネルでライブ配信を行い、ファンの視聴者とともに有馬記念の行方を見届けた。
藤田氏が本命に推したのは、横山武騎手の兄である横山和生騎手が騎乗したタイトルホルダー(牡3歳、美浦・栗田徹厩舎)だった。「大外(16番枠)だからといって、マイナス材料にはならない」と、現役時代の経験(有馬記念に12回騎乗)も踏まえた見解を披露。三連複フォーメーションの軸に据えた。
自身がシルクジャスティスで制した1997年の有馬記念などを振り返りながら、あっという間に時間は過ぎ、発走時間を迎えた。ゲートが開くと、菱田裕二騎手のパンサラッサが予想通りハナへ。藤田氏が本命に推したタイトルホルダーは、やや離れた2番手を追走した。
これには藤田氏も「(タイトルホルダーが)単騎でハナを切っているようなレースになっている」と予想通りの展開にニンマリ。直線を向いたところでタイトルホルダーが単独先頭に立ち、粘り込むかと思われたが、残り200mを切ったところで外からエフフォーリア、ディープボンドなどに交わされ、最後は5着でゴールインした。
本命馬が馬券圏外に消えてしまい、残念ながら予想的中とならなかった藤田氏。大一番を見終え、「タイトルホルダーは残念だったけども」と切り出すと、「いいレースだったね」と気持ちを切り替え、レースを振り返った。
そして次から次へと口をついて出てきたのが、勝利ジョッキーとなった横山武騎手への称賛の言葉だ。「武史、素晴らしいねー。うまく乗った。うまく乗ったし、大したもんだわ」と褒めちぎると、「彼は本当に立ち回りがうまいね。馬も強いけど、武史のコース取りとエフフォーリアに対しての信頼ってすごいね」と続けた。
さらに「スーパージョッキーになるね。この子は」と将来の更なる飛躍を予想した上で、話題は唯一エフフォーリアが敗れた今年5月の日本ダービー(G1)にも及んだ。
単勝1.7倍の断然人気に支持されるも、シャフリヤールにハナ差で敗れた7か月前のレースに思いを巡らせると「ダービーも(横山武騎手に)勝たせてあげたかったなって思う」と率直な気持ちを口にした。
ただ、「ダービー勝たれちゃったら俺の2番目の最年少記録が破られちゃうんで、ちょっとその辺ジェラシー感じながら俺も見てたんで……」と当時の複雑な心境が再燃したようだった。
ご存じの通り、1996年のダービーを2戦2勝のフサイチコンコルドで勝利している藤田氏だが、当時24歳だった。これはJRAが設立されて以降では、2番目の年少記録で、それ以降も2位という記録を保持している。
7か月前は22歳だった横山武騎手に対し、嫉妬心のような気持ちを抱いていたことも明かした藤田氏。そんな元敏腕ジョッキーが改めて太鼓判を押した横山武騎手の未来は明るいに違いない。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。