JRAファンの「苦情」が陣営に伝わった!? 血縁重視の“迷走”から苦渋の決断……コントレイルに次ぐ人気を誇った実力馬が「鞍上強化」で一変
8日、中山競馬場で行われたニューイヤーS(L)は、菅原明良騎手のカラテが1番人気に応えて勝利。昨年2月の東京新聞杯(G3)以来となる通算6勝目を飾った。
「今日はフレッシュでとても良い状態でした。中山ではいつも早めに動かしていくのですが、今日はいつもより待って動いていきました」
会心の勝利をレース後にそう振り返った菅原騎手だが、カラテはデビュー初の重賞勝ちをプレゼントしてくれたパートナー。次走に予定している東京新聞杯の連覇に大きく近づく勝利だった。
その一方で、メンバー最速の切れ味で先行勢を飲み込んだ勝ち馬に対し、あと一歩のところで勝利の女神から見放されたのが、クビ差2着のグランデマーレ(牡5、栗東・藤岡健一厩舎)だ。
ただ、敗れたとはいえ、今後に繋がる2着だったことは評価が可能である。
近走は5戦連続マイル戦に使われているが、デビュー戦は芝1800m、2戦目にも芝2000mを連勝した。2戦無敗で挑んだ20年神戸新聞杯(G2)では、無敗の三冠馬コントレイルに次ぐ2番人気の支持を集めたほどの素質馬でもある。
「道中の感じが良く、リズム良く運べました。直線ではジリッぽくなりましたが、3着馬を交わしていますし、よく頑張っています」
この好走は、今回初コンビとなった戸崎圭太騎手による好騎乗も大きかっただろう。
なぜならグランデマーレの近2戦の敗戦は、騎手も厩舎も迷走に近いイメージが強かったからだ。
同馬はデビューから7戦を藤岡佑介騎手がコンビを組んでいた。8戦目で初めて乗り替わったが、起用されたのは弟の藤岡康太騎手。グランデマーレを管理しているのが、父である藤岡健一調教師のため、トップジョッキーとはいえない息子二人に任せたのは、子の活躍を期待する親心もあったのだろう。
だが、左回りが苦手の噂もあった馬を問題ないと使った新潟の関屋記念(G3)で5着。それも先行した馬が好走したレースで、藤岡佑騎手が道中で動かないまま後方に下げ、上がり最速の脚を駆使しながら脚を余す格好で敗れた。
これにはネットの掲示板やSNSでファンから「先行馬だろこの馬」「左回りで5着でも騎手が酷い」「いい加減乗り替わって欲しい」と辛辣な意見も出ていた。
そんな経緯がありつつも、兄から弟になっただけの乗り替わりは、血縁重視と見られても仕方のない背景があった。
しかも、康太騎手が騎乗した京成杯AH(G3)で11着に大敗してしまったのだから、結果的に藤岡兄弟で結果を出せなかったともいえる。
「苦手とされる左回り新潟の関屋記念で5着から、得意なはずの右回り中山の京成杯AHで惨敗では、陣営が迷走しているという声が出たのも不思議ではなかったです。
息子2人で空回りした2戦の後、戸崎騎手に替わった今回の好走ですから、結果的に“鞍上強化”の効果があったということでしょう」(競馬記者)
陣営に対するファンの“苦情”が伝わっていたのかどうかは分からないが、父が苦渋の決断をした結果は、近走不甲斐なかったグランデマーレにとって、大きな意味があったのかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。