JRA 苦労人ダービージョッキーが「因縁」JRAの舞台に殴り込み!? AJCC(G2)で初挑戦も侮るべからず?「ノーマーク」でこそ本領発揮のG1馬
23日、中山競馬場で開催されるアメリカジョッキークラブC(G2)は、現時点で14頭がエントリー。エフフォーリアを筆頭にハイレベルな馬が揃う明け4歳世代のオーソクレース、重賞で好走が続いているポタジェらを筆頭に強力なメンバーが集った。
同レースは別定戦で斤量のバラつきが少ないなか、実績各馬を差し置いて1頭だけ57キロのメンバー最重量を背負う馬がいる。それが船橋競馬から参戦予定のキャッスルトップ(牡4歳、船橋・渋谷信博厩舎)だ。
2020年10月に船橋でデビューした本馬だが初勝利は翌年5月と遅れ、当初はほとんどのファンから見向きもされない存在だった。ただここで勝ち癖がついたのか、これまでの未勝利が嘘だったように次走・次々走も勝利し、あっという間に3連勝を達成。
とんとん拍子に連勝を重ねた本馬が次に狙いを定めたのが、ジャパンダートダービー(G1、以下JDD)だ。世代最強のダート馬を決める地方交流のG1戦だけあって、連勝中とはいえ、キャッスルトップは単勝129.5倍のブービー人気だった。
しかし、レースでは好スタートから主導権を握ると、ゴールまで後続の追撃を許さず逃げ切り勝ち。誰もが予想していなかった4連勝で、一夜にしてG1馬の仲間入りを果たした。
そんな大波乱に一役買ったのが、キャッスルトップの主戦・仲野光馬騎手だ。
小さい頃から騎手を目指していた同少年は、東京競馬場の乗馬センターで乗馬を始めるため、府中市に引っ越すほど熱意があった。JRA競馬学校は不合格に終わってしまったが、その後地方競馬教養センターに合格。地方競馬の騎手としてスタートするはずだった。
だが、卒業直前に体重管理が厳しくなり、まさかの退学。一般企業に就職し競馬の道から一旦離れたが、騎手になる夢を諦めきれず。船橋競馬の厩務員として再出発した後に、騎手試験に合格し、現在に至る。まさに苦労人以外の言葉が見つからない経歴を持っている。
「仲野騎手の好きな馬は、スペシャルウィークとダイユウサクだそうです。紆余曲折を経て、31歳にしてやっと掴んだJRAでの騎乗。元々目指していたJRAの騎手にはなれませんでしたが、好きな馬たちが走った中央の舞台で爪痕を残すような騎乗を期待したいですね」(競馬誌ライター)
人馬にとって初のJRA芝出走プランは、昨年のJDD直後に浮上したという。ただ、そのJDDを勝利したことによって55キロで走れるところを2キロ加算される厳しい状況だ。『netkeiba.com』の単勝予想オッズでは、単勝150倍台の12番人気と下馬評は決して高くないが、走る以上勝算が無いわけではない。
「戦前の陣営の意気込みから、どんなスタートでも逃げるような気がします。これといった逃げ馬は他にもいませんから、恐らく単騎の逃げに持ち込めるでしょう。そうなれば、JDDのようにノーマークからの逃げ切りなんてこともあるかもしれませんよ」(競馬誌ライター)
父バンブーエールと血統的に芝を走っている馬はいないが、マイペースの逃げから持ち前の粘り腰を発揮すれば、仲野騎手の好きなダイユウサクのようなアッと驚く激走があるかもしれない。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……