JRA イクイノックスVSジオグリフは実現せず!? 豪華絢爛の木村哲也厩舎が抱える深刻な“C.ルメール依存症”…解決策はいつものアレ?
昨年、所属騎手へのパワハラに関する訴訟に関連して、JRAから調教停止処分を受け、同年11月に復帰した木村哲也調教師。復帰後は着実に勝ち星を挙げ、重賞を2勝するなど順調な再スタートを切っている。
昨年は悪目立ちしてしまった木村厩舎だが、名誉挽回へ向けて大きなチャンスとなりそうなのが3歳クラシック戦線だ。今年は主役となり得る、強力な3歳馬が揃っている。
中でも筆頭格はイクイノックスだろう。
8月の新馬戦では、後に2歳女王となるサークルオブライフ、エリカ賞(1勝クラス)勝ちのサトノヘリオスなどに7馬身以上の着差をつけ圧勝。2戦目の東京スポーツ杯2歳S(G2)でも上がり3F32.9秒の豪脚を繰り出し快勝。暮れの2歳G1こそ姿がなかったが、現時点で同世代の中でも頭ひとつ抜けた存在になっている。
次に名が挙がるのがジオグリフだ。
2戦目となる札幌2歳S(G3)を圧勝し重賞初勝利。続く朝日杯FS(G1)では2番人気の支持を受けるも5着に敗れている。しかし、距離短縮や直線での不利など、ベストパフォーマンスとは言い難い内容だった。陣営からもポテンシャルは高く評価されており、札幌2歳Sの内容から世代間での実力は上位だろう。
その他にも、重賞2勝のリアアメリアの妹で、ベゴニア賞(1勝クラス)2着のリアグラシア。サウジアラビアロイヤルC(G3)2着のステルナティーア。カンナS(OP)勝ち馬で、叔父にG2・3勝のシャケトラがいる良血コラリンなど、実力馬が揃う。
大将格のイクイノックスは皐月賞(G1)直行を予定。その他の馬も、今後順調に駒を進めればクラシック本番でも有力候補の一角となってきそうだ。
その一方で、陣営が今後頭を悩ますであろうことが「鞍上問題」だ。木村厩舎で勝ち上がっている現3歳世代の7頭のうち、6頭に直近のレースでC.ルメール騎手が騎乗している。
阪神JF(G1)でのステルナティーアのみ、主戦の福永祐一騎手が香港で騎乗するための代打騎乗で、今後は福永騎手に戻る可能性がある。しかし、他の馬は事実上ルメール騎手が主戦の馬ばかり。今後は前哨戦だけでなく、本番を迎える際にも多くの馬が他の騎手への乗り替わりを強いられる事になりそうだ。
ただでさえG1での乗り替わりはマイナスと言われるが、名手ルメール騎手からの乗り替わりとなると、鞍上弱化は否めない。管理馬が勝ち上がれば嬉しい反面、鞍上問題では陣営も頭が痛いところだろう。
牡馬路線では、現状イクイノックスを選ぶ可能性が高いと見られているが、ジオグリフも次戦に予定している共同通信杯(G3)の内容次第では、ルメール騎手を悩ませる事になるかもしれない。ちなみにルメール騎手には、他にも国枝栄厩舎所属のコマンドラインなどがおり、実力馬を選り取り見取りといった状況だ。
最近では、同じ騎手でレースに出走するために、お手馬同士の直接対決を避けるレース選択をするケースもあるようだ。木村厩舎の管理馬の多くはノーザンファーム生産馬で、馬主もサンデーレーシング、シルクレーシング、キャロットファームなどノーザンファーム系の一口馬主クラブがずらりと並ぶだけに、いわゆる”使い分け”も視野に入るだろう。
陣営がどういったレース選択をし、ルメール騎手がどの馬に騎乗するのか。この春の主役となり得る木村厩舎と5年連続リーディングジョッキーの動向から、目が離せない。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。