JRA C.ルメールと横山武史が「バチバチ」の潰し合い! 真打ち登場に揺れる砂上の楼閣、首位陥落は時間の問題か
年始の中央開催も残すところあと1週となり、今週からは舞台も中山から東京へと替わる。順調に勝ち星を積み重ねた騎手がいる一方で、思わぬ苦戦を強いられている騎手もいるが、現時点で頭一つ抜け出しているのが川田将雅騎手だ。
開幕で躓いた昨年は初勝利まで26連敗と大ブレーキだったが、今年はまるで別人のように勝ち星を量産している。全国騎手リーディングでは、17勝を挙げてダントツの首位。12勝で2位のC.ルメール騎手、11勝で3位の横山武史騎手をリードした。
しかし、このまま首位固めすることが出来るのかとなると、早くも黄色信号が灯っているのかもしれない。
なぜなら既に先週の中山で、首位陥落の予兆が見えていたからである。
1月5日の開催初日から先週の23日まで8日間を皆勤していた川田騎手に対し、恒例の正月休みを取っていたルメール騎手は、9日から参戦で6日間の騎乗。横山武騎手にしても騎乗停止処分を受けた関係で15日、16日の騎乗はなくこちらも6日間の騎乗だった。
2日のハンデをもらっていたと考えた場合、2位ルメール騎手との5勝差は、あまり意味を成さないともいえるだろう。
そして、首位陥落のXデーが近いことを予感させたのが先週の中山におけるルメール騎手と横山武騎手のガチンコ対決だ。
この日、中山1Rからいきなり始まった直接対決は、横山武騎手が勝利してルメール騎手は3着に敗れた。その後の4Rも横山武騎手が勝利したが、8Rまで両者が代わる代わる勝利。トータルでルメール騎手3勝、横山武騎手4勝に終わった。
翌日の中山ではルメール騎手が3勝、横山武騎手が2勝で終わったが、土日合わせてこの2人のワンツーフィニッシュは5回もあったように、デッドヒートを繰り広げていたのである。
「格の違いを見せて年始のリーディングに君臨していたC.デムーロ騎手が帰国したため、他の騎手からすると“目の上のこぶ”が取れた状況となりました。川田騎手の1位は、その恩恵も大きかったと思います。
ですが、ルメール騎手と横山武騎手の猛チャージを見せられると、今年もまたリーディングジョッキーの座は難しそうな雰囲気ですね。勝ち負け濃厚な馬ばかりに絞って、騎乗数を減らしているのも苦戦を強いられている一因でしょう」(競馬記者)
事実、毎年のようにリーディング上位につけている川田騎手だが、トップのルメール騎手に対して騎乗数はかなり少ないといえる状況だ。2019年こそルメール騎手との差は65だったものの、20年187、21年324と差は開く一方。この数字を見せられると、リーディング奪取を目論むには少々無理がある気もしてくる。
川田騎手としては、自身のパフォーマンスなども考慮した上で落ち着いた現在のスタイルなのだろう。かつては日本人騎手によるリーディングジョッキーを目標に掲げていたものの、近年で何かしら心境の変化があったのだろう。
だとすれば、昨年大ブレイクした横山武騎手の台頭が著しい今年。場合によっては2位の座も危うくなる。そういう意味では、川田騎手のリーディングトップも砂上の楼閣に過ぎないのかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。