JRA「大失策」で伝統のG2が降格危機……かつてシーキングザパール、エルコンドルパサーら優勝も、近年は“ライバルG3”に完敗で崖っぷち

東京競馬場 撮影:Ruriko.I

 26日、JRA(日本中央競馬会)が日本グレード格付管理委員会による審査の結果、本年度から葵SのG3格付申請が承認されたことを発表した。

 昨年まで(重賞)として開催されていた葵Sだが、近3年のレースレーティングが3歳G3の基準値となる105を上回ったため、晴れてG3昇格が認められた。

 ちなみにレースレーティングは、1着から4着馬までのレーティングを平均化したものだ。昨年は大方の予想通りエフフォーリア、コントレイル、グランアレグリアの3強が1、2、3着を独占した天皇賞・秋(G1)が、日本で最も高いレーティングを叩き出している。

 そんな晴れやかな舞台がある一方、「降格の危機」を迎えている重賞がある。

「NHKマイルC(G1)のトライアルとして知られているニュージーランドT(G2)ですね。JRAによると、どうやらここ3年、3歳G2の基準値となる110から3ポイント以上下回っていたため、日本グレード格付管理委員会から警告を受けたそうです。もし、今年も基準値から3ポイント以上下回った場合、同委員会によって降格が審査されます」(競馬記者)

 記者曰く、本来なら2年下回った段階で警告、3年連続で降格審査とのことだったが、昨年の数値は新型コロナウイルスの影響によって適用除外になったという。ちなみにバスラットレオンが勝利した昨年のニュージーランドTはレースレーティング103.5と非常に低い値だった。

 ニュージーランドTは、1971年にニュージーランドの「ベイオブプレンティレーシングクラブ(現・レーシングタウランガ)」からカップの寄贈を受けたことに伴って誕生。交換競走として行われた「ベイオブプレンティレーシングクラブ賞グリーンS」が前身であり、1983年から現在のニュージーランドTとして施行されている。

 かつてはNHKマイルCの王道トライアルとして、ファビラスラフインやシーキングザパール、エルコンドルパサーといった後のG1馬が勝ち馬に名を連ねているニュージーランドT。やはり2000年から開催をNHKマイルCと同じ東京から中山へ変更したことが、今の低評価につながってしまったのだろうか。

「2000年から本番のNHKマイルCが5月の東京開催第4週から第3週に前倒しされたことを受け、『間隔が詰まり過ぎる』ということでニュージーランドTも4月の中山へ移設された経緯があります。

ただ、実は中山と東京ではコース形態が大きく異なるので、関係者の間では移設当時から不評でした。実際に中山移設以降、22年間でニュージーランドTとNHKマイルCを連勝した馬はカレンブラックヒルただ1頭しかいません」(同)

 記者曰く、そこに追い打ちをかけたのが、2018年にアーリントンC(G3)がNHKマイルCのトライアルとして、ニュージーランドTの翌週に移設されたことだという。

 その結果、東西の3歳マイラーがニュージーランドTとアーリントンCへ分散。さらに阪神外回りコースで行われる後者の方が「本番のコース形態に近い」ということで、本来ならG2として賞金が高いはずの前者の方が大きく後れを取ったというから驚きだ。

「ちなみにニュージーランドTの近3年のレースレーティングの平均が105.58と低調であることに対して、アーリントンCは110.42とG3ながらG2の基準値をクリアしているほどの好調ぶりです。

例えば、菊花賞(G1)に向かうセントライト記念(G2)と神戸新聞杯(G2)のように、JRAが東西にトライアルレースを設けることは珍しくないですが、このニュージーランドTとアーリントンCについては失敗だったと言わざるを得ませんね……。

今年、ニュージーランドTに有力なマイラーが出走し、かつ結果を出してくれることを祈るのみです」(同)

 近年、積極的な番組改編を行っているJRA。しかし、中には関係者から不評を集めてしまうものもあり、そのすべてが成功しているとは言えないようだ。

 果たして、今年のニュージーランドTはG2レースとしての威厳を保つことができるだろうか。それとも今年も「新型コロナウイルスの影響によって適用除外」という寂しい結果になってしまうのだろうか。春競馬の注目ポイントの1つになりそうだ。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

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