JRA武豊「さすが!お見事です!」横山典弘「たいしたもんや!」の大絶賛! 池添謙一メイケイエール「復活劇」の舞台裏にあった究極の選択
6日、中京競馬場で行われるきさらぎ賞(G3)にフォースクエアが出走する。
昨年10月の新馬戦を勝っただけの1戦1勝馬だが、栗東坂路で1月中旬から乗り込まれ、4週連続で好時計を叩きだすなど好状態をキープ。陣営も認めるレースセンスの良さで、キャリア2戦目での戴冠を狙う。
フォースクエア陣営にとって最も心強いのが、鞍上の存在だろう。
先週末にメイケイエール(牝4歳、栗東・武英智厩舎)に騎乗し、シルクロードS(G3)制覇に導いた池添謙一騎手だ。“暴走娘”と呼ばれる癖馬を2度目のコンビで見事勝利に導いた手腕と勢いは、ライバル勢にとってかなりの脅威になるだろう。
そんな池添騎手は、3日に配信された『netkeibaTV』の『謙聞録-kenbunroku-』で、シルクロードS勝利にまつわるエピソードを惜しげもなく語っている。
詳細はぜひ本動画をご覧いただきたいが、まず話題に上ったのが枠順だった。金曜日の午前に2枠3番の内目の枠に決まった際は「できれば外目の枠が欲しいなと思っていたので、『終わった』と思って……」とレース前にいきなり絶望感に襲われたことを明かした。
レース直前まで「どうしよう(どういう競馬をしよう)」と悩み続けていたという池添騎手。「腹を括って、(馬の気分に任せて)流していくしかない」と、スタート後無理に抑えることはしない戦法を決断した。
レースでは好発を決めて一度はハナに立つが、すぐにビアンフェを行かせると、一瞬掛かる場面はあったが、3角過ぎにはインの好位でピタリと折り合った。レース前に懸念していた制御不能な状態に陥ることは全くなかったという。
折り合いという課題をクリアしたメイケイエールは、やはり強かった。直線早めに抜け出すと、差し追い込み勢の追撃をしのぎ、最後は1馬身差をつけ昨年3月のチューリップ賞(G2)以来となる勝利をつかんだ。
この復活劇の裏にあったのが、発走の数分前に池添騎手に与えられた“選択肢”だったという。
この日のメイケイエールには「折り返し手綱」と「パシファイアー」と呼ばれる馬具が装着されていた。前者は馬の頭が上がりすぎるのを矯正するもので、後者はホライゾネットとも呼ばれ、メンコの目穴部分をネットで覆い、跳ね上げる砂などが眼に当たるのを嫌う馬に用いるものだ。返し馬でも池添騎手は、その効果を強く感じ取っていたという。
そして迎えたレース直前。池添騎手曰く「レースでは折り返し手綱は外す予定だった」のだが、集合場所に行くと、厩務員から予想外の言葉が飛び出したという。それが「武英調教師から折り返し手綱を外すか外さないかは任せる」という伝言だった。
「いや、(事前に聞いていた)話と違う」と、池添騎手は武英調教師に判断を任されたことに戸惑ったことを告白するも「ここ俺に責任持たせるか?」と、苦笑いを浮かべおどけてみせた。
発走時間が迫るなか、池添騎手と厩務員が下した決断は「前哨戦なので、(折り返し手綱を)使ってみようか」。それがレースの約3分前だったという。
馬具の効果もあって好結果を残した池添騎手。レース後にはメイケイエールに騎乗経験がある武豊騎手と横山典弘騎手からも祝福の言葉があったという。
同レースでマイスタイルに騎乗していた横山典騎手は、すぐに池添騎手に近づき、「勝ったなー!たいしたもんや!」と声を掛け、この日は東京で騎乗していた武騎手からは「さすが!お見事です!」というメールが届いたという。
レジェンド2人も制御しきれなかった癖馬のメイケイエールを池添騎手は完全に手の内に入れたのか、そして馬具の効果は継続するのか……。次走・高松宮記念(G1)でその答えが見られそうだ。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。