JRA アタマ差辛勝で浮かぶ藤沢師「最後」のダービー馬候補、超良血馬の「最悪事態」回避にファンもひとまず安堵?
6日、東京競馬場で行われた5R・3歳未勝利(芝1600m)は、C.ルメール騎手の1番人気ライラスター(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)が直線抜け出して勝利。2014年の桜花賞馬ハープスターの2番仔が、デビュー3戦目で待望の初白星を挙げた。
この日のメインレース、東京新聞杯(G3)と同じ舞台で争われた16頭立ての一戦。スタートを決めたルメール騎手とライラスターは、積極果敢に2番手の位置から追走。1000m通過60秒5と緩めのペースの中、軽く気合を付けられながら4コーナーを回り、最後の直線を迎えた。
ゴールまで残り400m辺りで先頭のネイキッドハートに並びかけると、ルメール騎手は満を持してスパート。だが、それほど後続との差を広げることができず、逆に外から伸びてきたカヨウネンカに差を詰められる苦しい展開。最後は2頭のマッチレースに近い形となったが、何とかアタマ差だけ残し切った。
「父ロードカナロアで母ハープスターは超良血といえる血統背景。単勝1.3倍の断然人気だったことを考えると、1着とはいえやや物足りない着差だったかもしれません。ただ今回は昨年の11月以来、約2ヶ月半の休み明けでもありましたから、叩かれた上積みと今後の成長力に期待したいですね」(競馬誌ライター)
母は桜花賞(G1)を制した同年秋に凱旋門賞(G1)に挑戦したほどの実力馬だったが、翌年3月のドバイシーマクラシック(G1)8着を最後に引退、繁殖入りしている。キングカメハメハとの間に生まれた初仔のアストライアが4戦未勝利で引退しているため、今回が嬉しい産駒のJRA初勝利だ。
SNSやネットの掲示板にはレース後、「初勝利おめでとうございます」「ハープスターの仔が勝って嬉しい」「次も楽しみにしています」等、ファンから祝福のコメントが殺到。また中には、「アークライトにならなくてよかったです」といった声も上がっていた。
ハープスターの全弟で、ライラスターの叔父にあたるアークライトは、藤沢和雄厩舎から20年にデビュー。クラブ法人のキャロットクラブにて総額1億2000万円で募集された期待馬は、定年が迫る藤沢和師の“最後のダービー馬候補”としても高い期待を集めていた。
しかし、初戦を単勝1.7倍で2着に敗れると、その後も勝ち切れないレースが続くことに……。昨年9月の未勝利戦では勝ち馬から6秒5離されたタイムオーバーの13着に大敗、ついには、このレースを最後に通算成績8戦0勝で中央登録を抹消されている。
実はライラスターが昨年9月の初陣で3着に敗れた際、SNSなどには「アークライトにならないかちょっと心配」等、未勝利に終わった叔父の再現を危惧する声もちらほらと上がっていた。だが今回1つ勝利を挙げられたことで、ファンもひとまずは安堵したようだ。
レース後、ルメール騎手が「休み明けだったのでまだ良くなると思います」と話せば、管理する木村師も「周囲の期待も大きいですし、素質を育んでいけるように頑張ります」と前向きなコメントを残していたのは好材料だろう。
偉大な母に近づくための1歩を踏み出したライラスターの、これからの活躍に期待したい。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。