JRAブラック企業も顔負け「昼休みナシ」の鉄人が存在感! 雪が呼び込んだきさらぎ賞(G3)不戦敗「回避」で池添ファミリー対決に明暗
6日、中京競馬場で行われた3歳の中距離重賞・きさらぎ賞(G3)は、2番人気のマテンロウレオが制して重賞初制覇。6着に敗れた前走のホープフルS(G1)から巻き返しに成功し、牡馬クラシック候補として名乗りを上げた。
同馬を勝利に導いたのは今月下旬に54歳を迎える大ベテラン横山典弘騎手。これで今年の重賞成績は6戦3勝となり、今年重賞未勝利の横山武史騎手、横山和生騎手という2人の息子にまたも父の威厳を見せつけた。
その一方、きさらぎ賞で父の威厳を見せたのは、横山典騎手だけでなく、メイショウゲキリン(牡3歳、栗東・池添兼雄厩舎)を送り込んだ池添兼調教師もまた、息子2人との“直接対決”に臨んでいたのだった。
兼雄師の長男はご存じグランプリ男の池添謙一騎手、そして次男は池添学調教師である。このレースでは、謙一騎手が5番人気フォースクエアに騎乗し、学調教師は4番人気エアアネモイを出走させていた……。
そんな池添ファミリーで最先着を果たしたのは父の兼雄調教師。8番人気の伏兵扱いながら、大外枠からハナを主張したメイショウゲキリンは。1000m通過が60秒6のマイペースに持ち込むと、直線で二枚腰を発揮して3着に逃げ粘った。
これに対し、フォースクエアは6着、エアアネモイは10着に大敗し、父は息子2人との“直接対決”を制しただけでなく、三連単2万超えの万馬券も呼び込んだ。
このヒモ荒れを演出したメイショウゲキリンだが、実は水曜日の時点で、きさらぎ賞を回避して、同日の中京4R・1勝クラス(ダート1800m)に横山典騎手とのコンビで向かうことになっていたというのだから驚きである。
「実際に複数のスポーツ紙がメイショウゲキリンのきさらぎ賞回避を報じていましたが、木曜日に発表された出馬表にはしっかりと名前が記載されていました。悪天候で週末の馬場が荒れると見込んで挑戦したのかもしれません」(競馬誌ライター)
降雪に見舞われた週末の中京だけに、天候まで味方につけた69歳のベテラン調教師の先見の明には、拍手を送るしかないだろう。
そして、メイショウゲキリンの逃げ粘りを演出したのもまたベテランの幸英明騎手だった。
この日は幸騎手にとってハードな一日だった。もともと騎乗回数(騎乗依頼)が多いことで知られる幸騎手だが、なんと1Rから最終レースまでの全12レースに皆勤していたのである。
騎乗数の多さで知られる幸騎手には珍しいことではないが、いつもとは少し勝手が違った。降雪の影響で1Rの発走時刻が予定より1時間遅い11時となったため、通常なら50分ある“昼休み”がないまま、ぶっ通しでの騎乗を強いられた。
しかし、鉄人にとっては、そんなことは些細な問題に過ぎないのかもしれない。むしろきさらぎ賞を含め、この日は「2-1-4-5」という好成績を残し、8R以降は5レース連続で馬券圏内に食い込んだことはさすがの一言だ。
横山典騎手、幸騎手、そして池添兼調教師……。今年はベテランの活躍が一際目立ったきさらぎ賞デーだった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。