JRA武豊「初めての距離がいい方に出れば…」驚愕の大変身を遂げたマイルCS(G1)から9年。悩める「6億円ホース」に期待したい覚醒の時

アドマイヤビルゴ

 12日(土)、阪神競馬場では芝マイル戦の洛陽S(L)が行われる。

 注目したいのは、デビュー時から「6億円ホース」として話題のアドマイヤビルゴ(牡5、栗東・友道康夫厩舎)だ。今回も、前走に引き続き武豊騎手が手綱を取る。

 同馬は一昨年の11月以降、勝利から遠ざかっており、重賞では頭打ちという状態が続いている。主にこれまで中距離を中心に戦ってきたが、今回は初のマイル戦に挑戦するとあって、SNSなどでは「マイル戦起用を待っていた」という声もあれば「距離が短すぎる」といった意見も聞かれるなど、早くも賛否両論を呼んでいる。

 武騎手で初のマイル戦というと思い出されるのは、13年のマイルCS(G1)で悲願のG1馬となったトーセンラーだ。

 前走で京都大賞典(G2)を走った馬が、マイルCSへ異例の挑戦。800mにも及ぶ距離短縮、初のマイル戦がいきなりG1という前代未聞の選択に、週中は競馬ファンや関係者の間でも賛否両論が飛び交った。最終的にトーセンラーは、単勝2番人気に支持されてレースを迎えることになる。

 スタート後、前半3ハロン35秒1というマイルG1では超スローペースともいえる流れのなか、後方から3、4番手でじっくりと脚を溜める。

「細かいことは考えず、直線に懸けようと思っていました」という鞍上の気持ちに応える様に、最後の直線に入ると一頭だけ別次元の末脚を発揮。そのまま前にいた馬たちをまとめて差し切り、鮮やかな直線一気を決めて勝利した。

 レース後のインタビューでは「初めての距離がいい方に出ればと思っていました」と語った武騎手。今までG1では、あと一歩足りない競馬が続いていたトーセンラーが、初のマイル戦で嘘のような変身ぶりを見せたのだ。

 このように、思わぬキッカケで馬が変わるという事は、競馬においては珍しい事ではない。あの時のトーセンラーと同じように今回が初のマイル戦となるアドマイヤビルゴにとっても、結果によって今後の人生が大きく変わる可能性がある。武騎手や陣営にとっても、期待を込めての挑戦だろう。

 血統面においても、マイル適性を後押しする材料がある。同馬の兄姉2頭はともに芝マイル戦で勝ち星を挙げており、その中でも昨年引退したサトノソロモンは、今回のアドマイヤビルゴと同様に中距離からマイルにシフトして結果を出し始めていた。同馬にとっても、マイルが新境地となる可能性は十分にある。

 さらに、今回レースが行われる阪神競馬場の成績は「2-0-1-1/4」で、唯一の馬券外は重馬場のなか行われた昨年の大阪杯(G1)のみ。全4勝の内2勝を挙げている好相性のコースといえる。

 重賞ではいまだに結果はでていないが、オープンやリステッドでは全て馬券内と安定した成績を残しているアドマイヤビルゴ。9年前、初のマイル戦がキッカケでG1馬の仲間入りとなったトーセンラーのように、悩める「6億円ホース」の驚きの一変に期待したい。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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