JRAオグリキャップ「再来」予感に名物アナも絶句…!? 無傷10連勝で中央へ殴り込み“笠松のオテンバ娘”が見せた豪脚

 13日、阪神競馬場で行われるのは桜花賞(G1)トライアルのフィリーズレビュー(G2)だ。阪神4歳牝馬特別として1967年に創設され、83年に報知杯4歳牝馬特別に改称。2001年から現名称となり今に至る。

 現在はチューリップ賞にその座を譲っているが、かつては牝馬クラシックへの登竜門に位置付けられていたレースでもある。1986年にこのレースを制したメジロラモーヌはJRA史上初の牝馬三冠にも輝いた。

 グレード制が導入された1984年以降、このレースを制した馬が桜花賞とオークス(G1)の両方で1番人気に支持されたのはメジロラモーヌ以外にも2頭いた。

 いずれも20年以上前になるが、そのうちの1頭が95年の覇者ライデンリーダーだ(もう1頭は97年キョウエイマーチ)。

 その年は1月に阪神・淡路大震災が発生した影響で、阪神競馬場が11月まで使用することができず。桜花賞、並びにそのトライアル競走は京都競馬場で行われた。

 3月19日、京都芝1400mの外回りコースで行われた報知杯4歳牝馬特別には、桜花賞を目指す16頭が出走した。そのレースで地方所属馬ながら、2番人気に支持されたのが笠松のライデンリーダーだった。

 95年は「交流元年」と呼ばれた年で、中央のG1レースが指定交流競走に。地方所属馬であっても、トライアルで優先出走権を獲得すれば、中央に移籍することなくG1に出走できるようになっていた。

 そんな記念すべき年に「デビューから無傷の10連勝」という看板を引っ提げて登場したライデンリーダー。同じく笠松競馬出身だったオグリキャップと比較する声もチラホラ聞かれるなど、ファンの注目度は高かった。

 そしてライデンリーダーは、このレースでオグリキャップの再来を予感させる豪脚を繰り出すことになる。

 この日、関西テレビの『ドリーム競馬』で、レース実況を担当したのは杉本清アナウンサーだった。27年前の実況を基にレースを振り返ってみたい。

 ゲートが開き、「ちょっとバラついたスタートになってしまいました」と、いつも通り落ち着いたトーンで幕を開けた杉本節。16頭の中で最初に呼んだ馬名はやはりこの馬だった。

「ライデンリーダーもちょっと手を動かして、現在4~5番手といったところ」と、積極的に位置を取りにいくライデンリーダーと鞍上の安藤勝己(当時騎手)の位置取りを実況する。

 ところが、初の芝で行きっぷりはイマイチ。鞍上が必死に促すが、なかなか前に進んでいこうとしない。3コーナー手前でカメラがその姿を捉えると、「これですね。2番ライデンリーダー。10戦10勝、笠松のオテンバ娘」と杉本アナ。そして「懸命に安藤勝己騎手、手綱をしごいて好位に上がろうというところでありますが、ちょうど中団からちょっと後ろといったところ……」と、行きっぷりの悪さと実況トーンがややリンクする形に。

 そして4コーナーを迎えても、ライデンリーダーはまだ中団。さらに直線を向くなり、鞍上が右ムチを一発振るうと、杉本アナの口からライデンリーダーの馬名はしばらく出てこなくなる。

 笠松のオテンバ娘がようやく呼ばれたのは、直線半ばに差し掛かる辺りだった。外に持ち出されたライデンリーダーが残り300m付近で一気に加速すると、先頭集団に襲い掛かった。

「オーっと、来た来た来た来た!外からライデンリーダー、来たぞ来たぞ来たぞー!ライデンリーダー、先頭に立つ勢いだー!抜けたー、ライデン…………」と、予想を上回る豪脚に杉本アナは絶句。実況アナの言葉数が最も多くなるはずのゴール前で、なんと3秒ほどの沈黙があった。

 そして、「これは強い!恐れ入った!なんとなんと、ライデンリーダー1着ー!」という実況とともに先頭でゴールイン。その末脚は杉本アナが2着争いに触れることも忘れるほどであった。

 さらにゴール板を過ぎた直後にも5秒近い沈黙をつくった杉本アナ。「なんとまぁ、強い……」とライデンリーダーの独壇場を最後はそう表した。

 初めての芝にもかかわらず、名物アナを絶句させる豪脚を披露したライデンリーダーだったが、1番人気に支持された桜花賞とオークスでは敗退。中央ではダート競走も含めて7戦したが、結局、1勝だけに終わった。それでも、あの日ライデンリーダーが見せた豪脚は今も色あせることはない。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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