JRA 1番人気オヌシナニモノ「批判覚悟」の作戦変更も無念の撃沈……大人気珍名馬が超えられない「50m」の壁

秋山真一郎騎手

 20日、中山競馬場で行われた千葉S(OP)は、3番人気のスマートダンディー(牡8歳、栗東・石橋守厩舎)がクビ差の接戦を制し、約2年ぶりの白星を飾った。

 レース後、鞍上の秋山真一郎騎手は「スタッフがいい状態に仕上げてくれました」と相棒の仕上がりを称賛。前走から導入したブリンカーも、勝利に大きく貢献したようだ。すでに8歳のシーズンだが、集中力を取り戻した今なら悲願の重賞初制覇も期待できる走りだった。

 一方、1番人気に推されたオヌシナニモノ(牡5歳、栗東・高橋義忠厩舎)は、深い迷路にハマってしまっているのかもしれない。

 オープン初挑戦となった前走のジャニュアリーS(OP)を3番人気で5着。それでもこの日、勝ったアポロビビを差し置いて1番人気に支持されたのは、やはりその独特な「馬名」所以だろうか。

 だが、レースでは最終コーナーで勝ち馬スマートダンディーとほぼ並走するも、最後の直線で脱落……。最後はファンの間で「ライバル」に認定されている?アイアムハヤスギルと仲良く7着、8着という結果だった。

 前走のジャニュアリーSでは、最後の直線で一度は先頭に立って“あわや”のシーンを作ったオヌシナニモノ。

 しかし、この日は中団やや前目の位置から、一度も先頭に立たない競馬。見せ場十分だった前走と比較して、やや消極的な内容にも映っただけに、レース後には一部のファンから「もっと前に行かないと」「何がしたかったのかわからない」など、主戦の斎藤新騎手の騎乗に疑問の声があった。

 だが、それには理由があったようだ。

「全4勝中3勝を占め、3戦3勝という戦績が示す通り、この馬のベストは1150m。わずか50mですが、1200mは少し長いんですよね。実際に前走のジャニュアリーSも、一瞬勝てるかと思う位置からパッタリと止まってしまいました。

さらに陣営は、その前走の敗因を『速い流れに巻き込まれた』と分析しているようで、この日もハイペースを追走して、最後で止まってしまうことには警戒していたようです。それであのような競馬になったのですが、やはり距離が微妙に長いようですね」(競馬記者)

 記者が話した通り、前走の最初の600mが33.9秒だったことに対して、この日は重馬場ということあって33.7秒とさらに速かった。

「ただ、あくまで個人の感想ですが、やはりこれまで通り積極的に前に行く競馬が、この馬には合っていると思います。これまで1200mは9戦して1勝2着2回ですが、馬券になったのはすべて脚抜きの良い不良馬場。この日は不良まで行かずも重馬場だったので、オヌシナニモノにとってはチャンスでしたが……」(同)

 陣営にとっては得意の1150mのレースを待ちたいところだが、残念ながらオープン以上の1150mのレースは存在しない。

 出走するたびにTwitterのトレンド入りする人気珍名馬だが、馬名ではなく勝利で脚光を浴びるために超えなければならない「あと50mの壁」は見た目の数字以上に高そうだ。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

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