元JRA安藤勝己氏「どんだけ強いんや」名手も舌を巻く日本馬のハイレベル化で海外G1席巻も……加速する国内G1の過疎化

撮影:Ruriko.I

 現地時間26日にドバイのメイダン競馬場で「ドバイワールドカップデー」が開催され、日本馬が出走した8レースで5勝を挙げる大活躍を見せた。先月サウジアラビアで行われた「サウジカップデー」でも多くの日本馬が好成績を収めており、近年中東のビッグレースは日本勢の独壇場といった様相だ。

 かつては海外遠征といえば、国内で頂点を極めた馬が、満を持して世界に挑むのが一般的だった。そして、海外のレースに出走する事は『挑戦』という意味合いも強かった。

 ただ、日本馬のレベルが上がった近年は、海外重賞でも勝ち負けになる事は珍しくない。 元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「日本馬どんだけ強いんや。今日勝っとるレベルの馬が国内にもゴロゴロおるんやから」と述べているように、必ずしも国内で突出した実績を持っていなかったとしても、適性があると見るや積極的に海外のレースに参戦し、結果を残せる時代となった。

 また、サウジアラビアやドバイでのレースは賞金が高いことで知られている。今回シャフリヤールが制したドバイシーマクラシック(G1)の優勝賞金は約4億2000万円で、パンサラッサが制したドバイターフ(G1)は約3億5000万円となっている。どちらのレースも同時期に日本で行われる大阪杯(G1)の優勝賞金2億円より遥かに高い。ドバイワールドC(G1)の賞金も、チュウワウィザードが3着に敗れたとはいえ、フェブラリーS(G1)の優勝賞金を上回る。

 人件費や滞在費などの諸経費はかかるにしても、今回のドバイでのレースは招待競走であるため、輸送費などは主催者が負担する。さらに海外遠征の機会が増えた事で、陣営にもノウハウが蓄積され遠征のリスクは減っている。それゆえ、国内よりも優位な戦いができる可能性が高く、尚且つ賞金が高額な中東などに遠征した方がいいと陣営が考えるのは自然な事だろう。

 一方、海外遠征が有力な選択肢として定着した今、その影響をもろに受けているのが日本国内の重賞戦線だ。

 来月3日には阪神競馬場で大阪杯が行われる。本来であれば春の中距離路線の最強馬を決める戦いとして、大いに盛り上がりを見せる所であるが、その顔ぶれを見てみると、昨年の年度代表馬エフフォーリアの1強ムードが濃厚だ。

 これに続くのは、アカイイトとレイパパレの牝馬2頭。共にG1を勝っているが、近走の戦いぶりからも現時点でエフフォーリアの強力なライバルとは言い難い。

 その他にも重賞勝ち馬はいるものの、昨年の天皇賞(秋)やジャパンC、有馬記念などトップクラスのG1で上位に入った馬はおらず、強いて挙げるとすれば天皇賞(秋)5着のヒシイグアスぐらい。最早ファンの注目は金鯱賞(G2)を制して快進撃を見せているジャックドールとエフフォーリアの直接対決ぐらいかもしれない。

 日本馬の海外遠征が活発化し、世界で活躍する姿を見られる事は喜ばしい。ただ一方で、国内のトップホースが一堂に会し、「一体どの馬が一番強いのか」と何日も前からワクワクするような、そんな戦いが国内で見られる機会が減っている事に、少し寂しさを覚える。

(文=椎名佳祐)

<著者プロフィール>
 ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。

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