JRA桜花賞(G1) 横山武史「3度目の正直」へ絶対に負けられない1戦! 2度あることは3度ある? 人馬に付き纏う「不安要素」とは
10日、阪神競馬場では牝馬3冠の第1戦、桜花賞(G1)が行われる。桜咲く仁川のターフで女王の座を射止めるのはどの馬か、レースに向けて期待が高まるばかりだ。
桜の女王を戴冠する「最有力候補」と目されているのがナミュール(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)である。デビュー2連勝で臨んだ阪神JF(G1)ではスタートで大きく出遅れ、直線は荒れた内ラチ沿いを通りながらも、鋭く末脚を伸ばして4着に食い込んだ。
この時から大器の片鱗を見せていたが、前走のチューリップ賞(G2)の走りが圧巻だった。直線半ばで前が塞がれる不利がありながら、外に進路を取ると次元の違う末脚を見せつけて快勝。最高の形で桜花賞に向かうことに成功した。
鞍上は前走からコンビを組む横山武史騎手を予定。馬主のキャロットファームと横山武騎手のタッグで、3週連続のG1・1番人気となることが濃厚だ。高松宮記念(G1)のレシステンシア、大阪杯(G1)のエフフォーリアは共に圧倒的な支持を受けながら惨敗。横山武騎手にとって、桜花賞は絶対に負けられない戦いとなる。
しかし、この横山武騎手とのコンビは、ナミュールにとって好材料とはならないかもしれない。
横山武騎手は、積極的な逃げ・先行策でこそ持ち味が発揮される騎手である。これはデータにもハッキリと表れており、デビュー以来の全騎乗を脚質別に見ると、「逃げ」の複勝率が46.2%、「先行」の複勝率が43.0%とそれぞれ驚異的な数字を残している。
一方で、「差し」の場合の複勝率は19.7%、「追込」の複勝率は6.3%と極端に数字が落ち込む。末脚勝負が持ち味のナミュールとは、データ的には手が合うと言い難い。
ナミュールは阪神JFで大きな出遅れをみせたように、スタートが得意な馬ではない。前走のチューリップ賞でも中団からの「差し」で勝利している。それに加えて今回の桜花賞は横山武騎手にとって「負けられない」1戦であり、騎手心理からも慎重策に陥りやすい状態だろう。
今回のレースでも前走のような、中段で控えて末脚勝負を狙う競馬になると思われる。横山武騎手は決して「差し」が得意ではないことは、予想の際も頭に入れておきたい。
また、その臨戦過程にも気になる点がある。ノーザンファーム生産馬の「世代のエース」であるナミュール。阪神JFで賞金を加算し、「直行ローテ」で桜花賞へ向かう青写真を陣営は描いていたはずだ。しかし結果的に賞金加算に失敗し、チューリップ賞では優先出走権獲得のために「本気で」走らざるを得なくなった。
一方で有力なライバルであるサークルオブライフやウォーターナビレラは、賞金的に余裕がある状況でチューリップ賞に臨んでいた。ここで一度叩いて、万全の状態で桜花賞に出走してくる。臨戦過程の充実度は、こちらの2頭に分があるだろう。
人馬に付き纏う不安要素を撥ね退け、「3度目の正直」となる勝利を挙げられるのか。はたまた「2度あることは3度ある」、まさかの敗戦を喫してしまうのか。ナミュールと横山武騎手の走りに注目である。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。