JRA皐月賞(G1)岩田康誠「痛恨の選択ミス」から15年、“ジェットスキー”追い切りも問題なしの無敗馬と臨む大一番。気性の悪さは「あの皐月賞馬」そっくり!?

デシエルト 撮影:Ruriko.I

 今年も4月に突入し、いよいよ春のクラシックが開幕。特に今期の3歳世代は、牡馬牝馬共に確固たる主役級の存在がおらず、大混戦必至の見方も強い。

 そんななか17日、中山競馬場では牡馬クラシック第1弾・皐月賞(G1)が行われる。大一番へ向け、出走予定馬が続々と1週前追い切りを消化したが、そのなかでひと際目立つ「超抜時計」をマークしたのが、若葉S(L)を勝ったデシエルト(牡3、栗東・安田隆行厩舎)だ。

 7日、主戦の岩田康誠騎手を背に栗東ウッドで追い切られると、6ハロン81秒6-11秒0と圧巻の猛時計をマーク。管理する安田隆調教師も「動きはすごかったね。走りはダイナミックだし、時計と照らし合わせても申し分ない」と絶賛したほどだ。

 時計面が目立つ一方で、話題となったのは追い切りでの岩田康騎手の姿だ。

「跨っていた岩田康騎手が入りから手綱を引っ張り通しで、まるで“ジェットスキー”のような態勢でなだめながらの追い切りでした。ラストは重心がグッと下がり、時計的には申し分ない切れ味を披露していますが、気性面での課題はありそうですね」(競馬誌ライター)

 気性的な難しさを内包しているようだが、調教映像を見た競馬ファンからは、ネット上の掲示板やSNS等で『こんな調教はじめて見た』『ブレーキかけてこの時計は凄い』など、むしろ同馬の底知れぬ能力に期待感が増すコメントも多く上がっていた。

 事実、指揮官も「テンションがすごく高くて……これ以上、上がると元も子もなくなる」と心配の声を漏らしていたが、それに対し主戦は「前走よりも全然マシ」と答えているように、この馬にとっては気の悪さは通常通りのようだ。

 その前走の若葉S勝ちから皐月賞を制した馬といえば、2007年のヴィクトリーがいる。古くからトライアルレースでありながら、あれから14年も皐月賞馬を輩出していないが、今回のデシエルトには当時のヴィクトリーと多くの共通点が見られる。

「思い返せば、ヴィクトリーも気性が難しい馬でした。管理していた音無秀孝調教師も能力を絶賛していましたが、当時は思った通りの調教ができずに苦労したと聞きます。皐月賞の1週前追い切りでは今回のデシエルトどころではなく、乗り手を振り落としたほどで、最終追い切りでもヤンチャな面は変わらず……。

しかし、結果はご存じの通り、本番では武豊騎手のアドマイヤオーラや、安藤勝己騎手のフサイチホウオーという大本命の2強を抑えての堂々たる逃げ切り勝ち。今回のデシエルトは、若葉S勝ちから皐月賞へ臨むこと、気性が難しい馬であること、逃げ馬であることなど当時のヴィクトリーと共通点も多く楽しみな存在です」(同)

 そして、実はこの15年前の皐月賞で「痛恨の選択ミス」により、苦い思いを経験していたのが岩田康騎手なのだ。

「当時は、フェラーリピサに騎乗して16着と大敗しましたが、この時の勝ち馬ヴィクトリーとのコンビで若葉Sを勝利し、皐月賞への出走権を取ったのは、まさしく岩田康騎手本人でした。ヴィクトリーに初騎乗となった田中勝春騎手の15年ぶりのG1制覇に一役買ってしまい、悔しい想いがあったはずです。

今回は同じくトライアルレースのスプリングS(G2)で自身が騎乗し勝利したビーアストニッシドではなく、ロードカナロアコンビでお馴染みの安田隆厩舎のデシエルトを優先したことからも、この馬に対する期待感が窺えますし、今度は『選択ミス』とはならないような結果を期待したいですね」(同)

 デビューから無傷の3連勝で若葉Sを制し、主戦の「炎上」インタビューで一躍知名度が上がったデシエルト。15年前に皐月賞を制したヴィクトリーのように、気性面の難しさはありながらも、有力馬を尻目にアッと驚く逃げ切りを期待したい。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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