JRA桜花賞スターズオンアースら「春G1勝ち馬」に生産界ガッカリ…!? ディープインパクト、ゴールドアリュール、そしてドゥラメンテに足りないもの

撮影:Ruriko.I

 春のG1戦線が開幕し、大きな盛り上がりを見せている競馬界。

 ここまで高松宮記念大阪杯、桜花賞と3つのG1が行われたわけだが、全国の競馬ファンが一喜一憂している一方、熱い視線を送っているのが未来のG1ウイナーを生み出す生産界の関係者だ。

 生産界にとっては2月頃から7月頃までが種付けシーズン、特にこの時期はまさに最盛期といえる1年で最も忙しい時期だ。だが、そんな中でも毎年頭を悩ませているのが「種牡馬選び」だろう。

 どんな種馬を付けるかによって、生まれてくる仔馬のタイプは大きく異なり、成功・失敗の大きな要因にもなるのが競走馬だ。それも1頭につき数十万~数百万円、時には1000万円を超える種付け料を支払うのだから、悩みに悩むのも当然だろう。

 そんな中で、種牡馬選びの決断の大きなポイントとなるのが、この時期の「春G1の結果」ではないだろうか。

 例えば、花婿候補としてリストアップしている種牡馬の産駒が、直近のG1や重賞を勝てば「やはりこの種牡馬か」と決断の大きな後押しとなることは想像に難しくない。ましてや、翌年になれば活躍馬を出した種牡馬の種付け料が上がることは必然。可能なら、今年の内に“勢い”にあやかっておきたいのが人情だ。

 逆に、すでに種付けを終えている関係者なら、自らが選んで付けた種牡馬の仔が活躍してほしいと思うのは当然だ。仮に、その幼駒を後に手放す予定なら、父の活躍次第で売値に大きな差が出てくる。無論、それは種牡馬を提供するスタッド側にも同じようなことが言えるだろう。

 だが今年の春G1は、そんな生産界にとって少し残念な結果に終わっている。

 

G1を勝った馬たちは素直に祝福されるべきだが……

 

 例えば、高松宮記念(G1)を勝利したナランフレグの父はゴールドアリュールだ。ゴールドアリュールといえばダートを中心に数多の活躍馬を送り出した「サンデーサイレンス系の砂担当」といえる大物だが、残念ながら2017年に他界しており、今年の4歳世代がラストクロップとなる。

 一方、大阪杯(G1)でエフフォーリアらを破り、波乱を巻き起こしたポタジェはディープインパクト産駒。言わずと知れた種牡馬界の大スターだが、残念ながらこちらも2019年に他界していることは多くのファンが知るところだ。

 中でも特に惜しまれるのが、先週の桜花賞(G1)を勝ったスターズオンアースの父ドゥラメンテだろう。

 2015年の二冠馬として、一昨年に初年度産駒がデビューしたばかりのドゥラメンテ。ファーストクロップからいきなり菊花賞馬のタイトルホルダーが出て一躍注目を集めると、今年も桜花賞をスターズオンアースが勝って、2年連続でクラシックホースを輩出することになった。

 また、特にここ数週間はタイトルホルダーが日経賞(G2)を順当勝ちして天皇賞・春(G1)の最有力候補に躍り出ると、翌週の大阪杯(G1)では伏兵のアリーヴォが3着に激走。そして“トドメ”がスターズオンアースの桜花賞制覇である。

 他にも敗れはしたが、毎日杯(G3)で1番人気に推されたドゥラドーレス、今週末のアンタレスS(G3)に出走を予定しているバーデンヴァイラーは次代のダート界を担う大器とまで評価されている大物だ。

 また、牝系がダイナカール、エアグルーヴ、アドマイヤグルーヴと続く日本でも屈指の超名門であるドゥラメンテ。もし、健在ならば今頃キングカメハメハの正統後継者として、ロードカナロアとハイレベルな争いを繰り広げていたはずだ。

 本来なら今頃、生産界では評価がうなぎ登りになっているはずのドゥラメンテだが、昨夏に世を去ったことは記憶に新しい。わずか9歳という、あまりにも早い別れだった。本馬を繋養していた社台スタリオンステーションにとっても、ただただ残念に違いない。

 昔から「才子多病」とはよく言ったもので、競馬界でもそういった歴史的な“損失”は枚挙に暇がない。無論、G1を勝った馬たちは素直に祝福されるべきだが、欲を言えば今週末の皐月賞は、できることなら元気な父を持つ仔の活躍に期待したい。

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