JRA皐月賞(G1)「致命的」不安抱えるキラーアビリティ、イクイノックス…結果を残した直行組の先輩に対し2頭に足りないモノとは?
17日の中山競馬場では牡馬クラシックの一冠目を争う皐月賞(G1)が行われる。今年はトライアルで頭角を現した伏兵が複数出走する上に未対決の組み合わせも多い。ハイレベルの戦いが期待できそうだが、各馬の力関係の把握は難解だ。
予想をする上で最も頭を悩ませられそうなのは、直行で皐月賞に参戦するキラーアビリティとイクイノックスの存在だろう。
前者は昨年のホープフルS(G1)を優勝しての休み明け、後者は東京スポーツ杯2歳S(G2)からという異例のローテーション。両馬とも前走で強い勝ち方をしており、ポテンシャルの高さに疑いはないとはいえ、G1の大舞台だけに気になる材料だ。
近年は外厩施設の充実や調教技術の進化により、こういった傾向も決して珍しくはなくなった。実際、前年からの直行で皐月賞を制した2019年サートゥルナーリアや2020年コントレイルが、ホープフルSを優勝して以来だったという例もある。
それと同時に触れなければならないのは、結果を残した2頭が既に世代最強クラスの評価を受けていた無敗馬だったことである。いずれも当時の関係者から三冠も狙えるという声すら出ていた大物であり、コントレイルはその後に無敗の三冠を達成している。
そう考えると、今年のキラーアビリティやイクイノックスにそこまで高い評価がされているのかとなるとまだ疑問が残る。
人気の2頭に足りないモノとは……
「例年は距離適性で上回るホープフルS組が朝日杯FS組を圧倒する皐月賞ですが、今年に関しては立場逆転の可能性もありそうです。萩S(L)でキラーアビリティが敗れた相手のダノンスコーピオンが朝日杯FS(G1)で3着。2頭の比較では朝日杯FSを制したドウデュースがおそらく優勢でしょう。
また、イクイノックスはホープフルSよりさらに1カ月前の東京スポーツ杯2歳S以来となる臨戦過程がどうか。こちらは無敗ですがキャリアは2戦のみ。それも左回りの新潟東京で右回りの中山は勿論初経験。直線の長い広いコースから器用さを求められる中山の小回りに替わるため、コース適性に不安があります」(競馬記者)
さらに逆風となるのが、騎乗を予定している騎手の調子がなかなか上がらないことだ。
キラーアビリティの横山武史騎手は、春のG1戦線で高松宮記念、大阪杯、桜花賞と1番人気馬の騎乗が続いたものの、すべて馬券圏外の連敗中。レシステンシア、エフフォーリア、ナミュールといった充実のラインアップで1勝も挙げられなかった。
そしてイクイノックスのC.ルメール騎手にしても、国内の重賞は昨年のチャレンジC(G3)をソーヴァリアントで制したのを最後に、勝利から遠ざかっている。海外遠征したサウジカップデーやドバイワールドカップデーこそ別人のような大活躍だったが、重賞24連敗中の日本ではまだスランプから抜け出せていない。
直行での戴冠に成功したコントレイルやサートゥルナーリアに比べスケール感に見劣る上、頼みの騎手が苦しい状況下にあるだけに厳しい戦いを強いられそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。