JRA武豊発言「聞き間違い」が発端!? 異例の「謝罪文」掲載に至ったリーチザクラウン“誤報問題”は将来を予告していた?

 24日の阪神メインはマイラーズC(G2)が行われる。今年は登録馬15頭中7頭が重賞勝ち馬という楽しみなメンバーがそろった。

 そんな今年を上回る10頭の重賞勝ち馬によって争われたのが12年前の当レースだった。G1勝ち馬も3頭を数えた2010年4月17日に行われたマイラーズC。制したのは安藤勝己騎手(現・競馬評論家)を背に3番人気に推された当時4歳のリーチザクラウンだった。

 前年には、牡馬クラシック三冠を皆勤し、皐月賞(G1)で2番人気、菊花賞(G1)では1番人気に支持された世代屈指の存在だったリーチザクラウン。3歳2月にきさらぎ賞(G3)を圧勝したが、皐月賞は13着に惨敗。ダービーこそロジユニヴァースの2着に入ったが、5着に敗れた菊花賞以降は、ジャパンC(G1)9着、有馬記念(G1)13着と苦しい戦いを強いられていた。

 4歳初戦に選んだフェブラリーS(G1)で10着に敗れると、陣営は芝のマイル路線に矛先を変更。落馬負傷のため休養中だった主戦・武豊騎手から安藤騎手にスイッチし、マイラーズCを迎えた。

 リーチザクラウンにとって、1年4か月ぶりの芝マイル戦だったが、鞍上の好騎乗も手伝って、きさらぎ賞以来となる勝利を飾った。そして、これ以降はマイルを中心に使われていくことになる。

 ただし、次走の安田記念(G1)では1番人気に推されたが14着に大敗。結局、7歳で現役引退するまで、次の勝利を挙げることはできず。結果的にマイラーズCが現役最後の勝利となった。

 父がスペシャルウィークという血統、そしてダービーでも2着に好走しているように、どちらかというと中長距離のイメージが強いリーチザクラウン。しかし、そのイメージとは裏腹に、現役終盤の6歳夏にはCBC賞(G3)など1200mの距離でも走っていた。

武豊騎手

 そんなリーチザクラウンを語るうえで欠かせないエピソードがある。13着に大敗した皐月賞後に武騎手のコメントを掲載したラジオNIKKEIによる“誤報問題”である。当時、同社が掲載した武騎手のレース後コメントがこちらだ。

「描いていた最悪の展開になってしまいました。短い距離で逃げるなら折り合いがつくんですけどね。これで見ていた人も分かると思いますが、長い距離は向かないです」(当時の原文ママ)

 当時、これを見た多くのファンは武騎手の発言に戸惑ったという。これからダービー、菊花賞を目指すリーチザクラウンにとって、2000mは長い距離なのか……と。

リーチザクラウン“誤報問題”は将来を予告していた?

 実は、このコメントは誤報だったことが後に判明する。レース後に武騎手のコメントを聞いた取材者が「単騎で」というフレーズを「短距離で」と聞き間違えたものだったのだ。さらに、武騎手の発言にはなかった「長い距離は向かないです」という部分を取材者の推測で付け足してしまったという。

「リーチザクラウンはその世代の中心的存在。しかも鞍上が全盛期の武騎手でしたから、注目度は高い馬でした。当時、武騎手の同じコメントを掲載した他社は『単騎で~』と、正しく報じていたので、ラジオNIKKEIにも、間違いを指摘する声があったといいます。

結局、ダービー直前になってラジオNIKKEIは謝罪文を掲載。皐月賞から1か月以上たって、ようやく当該コメントを訂正しました。

ただし、リーチザクラウンはその後にマイラーズCを制覇。古馬になってからマイル路線を歩んだため、結果的に記者の推測が正しかったというオチがつく形になりました」(競馬誌ライター)

 あれから10数年。種牡馬となったリーチザクラウンの産駒はJRAの芝で通算36勝しているが、そのすべてが1800m以下である。やはりその正体は“マイラー”だったのだろうか。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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