【かしわ記念(G1)展望】武豊インティ「掟破り」のポツンもあり!? 大混戦の船橋にテイエムサウスダン、“第二のマルシュロレーヌ”候補も参戦
5日、船橋競馬場では第34回かしわ記念(G1)が行われる。今年はJRA勢6頭、地方勢8頭の計14頭が出走を予定している。
19年フェブラリーS(G1)の勝ち馬インティ(牡8歳、栗東・野中賢二厩舎)に3年3か月ぶりの美酒を味わうチャンスがやってきた。
怒涛の7連勝でG1馬に上り詰めたのは19年2月。あれから3年以上が経ち、8歳を迎えたインティには、その後14連敗という事実が重くのしかかる。それでも、時折、馬券圏内に好走しているのもまた事実だ。
連敗中の14戦で2着が1回、3着は4回を数えるが、うち2回がかしわ記念での好走である。19年はフェブラリーS制覇直後で断然1番人気に支持されたが、ゴールドドリームに差し切られての2着。そして昨年は4番人気での3着だった。
インティにとって左回りの1600mはベストの舞台。ただしその条件で走った前走・フェブラリーSは11着に敗れている。敗因は2つあった。1つ目はスタートでの立ち遅れ、そして2つ目が道中で馬群に揉まれて掛かってしまったことだ。年齢を重ねてテンのダッシュ力が影を潜めた今、道中でいかに揉まれず競馬ができるかが好走の必須条件となる。
ヒントとなるのは、後方から3着に追い込んだ昨年のレースだろう。その時は「スタートで遅れてしまって、もったいなかった」と、武豊騎手が振り返ったように、スタートで痛恨の大出遅れ。後方からの競馬を強いられたが、先行集団からポツンと離れた位置取りがプラスに作用した。
「ポツンと行けて初めて折り合いがついた」「こういう競馬ができたのは良かった」という武騎手のコメントからも、前後ろ関係なく、揉まれず競馬ができるかどうかが全てといえそうだ。
多頭数、かつ小回りの船橋で、そういう競馬が難しいのは百も承知。それでも武マジック炸裂に期待がかかる。
インティが11着に敗れたフェブラリーSで2着に好走したのがテイエムサウスダン(牡5歳、栗東・飯田雄三厩舎)だ。
2歳時から地方の交流重賞で下地を作り、昨年岩田康誠騎手に乗り替わったのをきっかけに殻を破り、G1も狙える立ち位置に成長を遂げた。
前哨戦の根岸S(G3)を勝った後も、「1400mの鬼」という評価をぬぐえなかったが、フェブラリーSで好走。鞍上の見事なペース読みも手伝って、マイルもこなせることを証明した。
今回は逃げ・先行タイプがそろっており、根岸Sのときのように控える競馬が濃厚。目下の充実ぶりなら、好位~中団からの競馬でも勝ち負けの可能性は高いだろう。
根岸Sの勝利騎手インタビューで「まだまだこれからの馬ですから」と語っていた岩田康騎手。全日本2歳優駿、そして前走に続き3度目のG1挑戦で大輪の花を咲かすことはできるか。
JRA勢では唯一の牝馬、ショウナンナデシコ(牝5歳、栗東・須貝尚介厩舎)にもチャンスがある。
1年前は2勝クラスで勝ちあぐねていた条件馬だったが、昨年10月以降に力をつけた。重賞初挑戦となった1月のTCK女王盃競走(G3)でテオレーマの2着に入ると、エンプレス杯(G2)、マリーンC(G3)を連勝。昨秋以降は「4-2-0-0」と崩れていない。
特に圧巻だったのは前走の走り。2着馬に1秒7差をつける圧勝。牡馬の一線級とは初対戦になるが、今の勢いなら牡馬を蹴散らし、そのまま頂点に立つ可能性も考えられる。
5歳にして飛躍を遂げたオルフェーヴル牝駒といえば、昨年のマルシュロレーヌが思い浮かぶ。ショウナンナデシコが“第二のマルシュロレーヌ”となれるかどうか、ここが試金石となる。
地方勢からは地元・船橋所属の2頭が有力だ。
リピーターの活躍が目立つこのレース。昨年の覇者カジノフォンテン(牡6歳、船橋・山下貴之厩舎)は、その後の1年間は苦戦が続いた。ようやく復調の兆しを見せたのは前走・京成盃グランドマイラーズ(G)。2着に入り、反撃態勢は整った。
G1初挑戦のギャルダル(牡4歳、船橋・川島正一厩舎)は、いずれ南関東を背負う立場になり得る存在だ。13年のかしわ記念を制したホッコータルマエの産駒で、昨年の東京ダービー(G)2着という実績がある。1700m以下の距離は、「4-3-0-0」とパーフェクト連対中。あとは現状の力が足りるかどうかだけだ。
昨年の2着馬ソリストサンダー(牡7歳、栗東・高柳大輔厩舎)は、マイルで安定した走りを続けている。前走・ゴドルフィンマイル(G2)4着から1か月強の間隔で迎える一戦。海外遠征の疲れがなければ、ここでも好勝負は望めそうだ。
この他には、衰え知らずのエアスピネル(牡9歳、栗東・笹田和秀厩舎)、川崎競馬に移籍後初戦を迎えるタイムフライヤー(牡7歳、川崎・内田勝義厩舎)も侮れない存在だ。
例年以上に混戦ムードのかしわ記念。発走は5日を予定している。