JRA戸崎圭太「約3年間」重賞1番人気連敗止まらず……出遅れ&ドン詰まりでクラシック候補の道を閉ざし、レース後に謝罪も
またしても「ダメ」だった。
4日、園田競馬場で行われた交流重賞・兵庫チャンピオンシップ(G2)は、3番人気のブリッツファング(牡3歳、栗東・大久保龍志厩舎)が勝利。鞍上の池添謙一騎手が「直線を向いた時点で勝ちを確信した」と豪語するほどの8馬身圧勝劇だった。
2着ノットゥルノ、3着コンシリエーレを始め、今年もダート界の将来を担う有力候補が集った兵庫チャンピオンシップ。ただ、そんな中でも単勝1.8倍という圧倒的な支持を集めたのが、昨年の2歳ダート王ドライスタウト(牡3歳、栗東・牧浦充徳厩舎)だった。
無敗の2歳ダート王でも「流れ」変わらず
昨秋はデビューから3連勝で全日本2歳優駿(G1)を制覇。2着に負かしたコンバスチョンが、今年2月のヒヤシンスS(L)を他馬より1kg重い斤量で快勝しているのだから、このオッズは妥当といえるものだったかもしれない。
しかし、レースでは発馬から滑ってバランスを崩すアクシデント。後方から早めに追い上げたものの、最後は上位馬に突き放された4着に終わった。1番人気で4着と着順だけを見れば、そう悲観する内容ではないが、勝ったブリッツファングからは約17馬身3/4という大差をつけられ、世代No.1から引きずり降ろされた格好だ。
「ここまでマイル以下の経験しかなく、もとから距離(1870m)への不安がありました。そこへきて、スタート直後に大きくバランスを崩すアクシデント。初の右回りということもあって、鞍上の戸崎圭太騎手も『外に張りながら走ってた』と話していましたね。今回は仕方ない敗戦だったと思います」(競馬記者)
そう話した記者は、馬のことよりも「戸崎騎手のことが気になる敗戦でした」と語る。
確かに、競馬ラボで連載中の『週刊! 戸崎圭太』でも今回のドライスタウトについて「率直に楽しみですね」と語るなど、大いに期待している様子だった戸崎騎手。それだけに今回はショッキングな敗戦となってしまったが、それ以上に最近はJRA重賞での不振が続いているようだ。
「プレサージュリフトで2月のクイーンC(G3)を勝つなど、今年も重賞でちょくちょく存在感を発揮している戸崎騎手ですが、もうずっと1番人気で重賞を勝ててないんですよね。
交流重賞なら、それこそドライスタウトが昨年の全日本2歳優駿で1番人気に応えていますが、JRAの重賞に限ると3年前の毎日王冠(G2、ダノンキングリー)まで遡らなければなりません」(同)
戸崎騎手といえば、南関東のトップジョッキーとして鳴り物入りで中央に移籍。2014年からは3年連続で全国リーディングに輝くなど、JRAを代表する名手の1人だ。
しかし、2015年にC.ルメール騎手とM.デムーロ騎手がJRA所属騎手となった影響もあって徐々に低迷……。今では関東リーディングさえ、若き横山武史騎手に譲っている状況だ。
とはいえ“腐っても鯛”である。昨年も秋華賞(G1)勝ちを含む重賞6勝と、大舞台での勝負強さは健在……しかし、今年は例年以上に重賞成績が悪化しているというから驚きだ。
「単純に重賞の成績だけを見ても、ここ3年間は3着以内率3割以上をキープしており、信頼できるジョッキーの1人でした。
しかし、今年はそれが1割7分まで低迷……。特に目立つのが上位人気馬での敗戦で、今年は根岸S(G3)、オーシャンS(G3)、ファルコンS(G3)、毎日杯(G3)と4度の1番人気がありましたが、馬券に絡んだのは毎日杯のドゥラドーレスのみ。それも単勝2.1倍の大本命馬ながらスタートで出遅れた上に折り合いを欠き、最後の直線では前が詰まって脚を余して3着という非常に心象の悪い敗戦でした。この日の敗戦も含め、どうにも流れが悪い印象です」(同)
記者が話す毎日杯の敗戦については、戸崎騎手も「(馬群が)バラけず、追い出しが遅くなりました。力があるところは証明出来ましたが、人気に応えられずに申し訳ありませんでした」とレース後に謝罪の言葉を述べている。
その後、賞金加算に失敗したドゥラドーレスは春のクラシックを断念し放牧へ。一方、このレースを勝ったピースオブエイトが先日、日本ダービー(G1)挑戦を発表するなど、明暗が大きく分かれる結果となった。
ここ最近でもフローラS(G2)で騎乗したルージュエヴァイユは、最後の直線で前が塞がるアクシデント。ならばとハナを切った先週の青葉賞(G2)は、最後の直線でズルズルと後退。騎乗したディライトバローズは右前浅屈腱を断裂したとして、長期休養を強いられることとなった。
「返し馬の段階からいつもほどではなかったし、久々の影響があったのかもしれません」
1番人気に支持された兵庫チャンピオンシップで4着に敗れたのち、そう馬を庇った戸崎騎手。その一方で、関東リーディングを争うライバル騎手たちは吉田隼人騎手が大阪杯(G1)を勝ち、横山和生騎手が先週の天皇賞・春(G1)を勝つなど、際立った存在感を見せている。
3年連続リーディングを獲得した2016年は年間187勝と、関東2位の内田博幸騎手の89勝に約2倍の差をつけていただけに、本来なら関東リーディングを争うに留まる騎手ではないはずだ。まだまだ関係者からの信頼は厚いだけに、巻き返しが期待される。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。