JRA 「973万馬券」と18番人気馬の激走を繋げる名牝の存在…カワキタレブリーが演出した「15年ぶり」珍事、サイン馬券なら的中も夢ではなかった?

カワキタレブリー 撮影:Ruriko.I

 8日に東京競馬場で開催された3歳マイル王決定戦、第27回NHKマイルC(G1)を制したのは、ダノンスコーピオンと川田将雅騎手のコンビだ。8枠18番という大外枠も嫌われたのか4番人気と意外な低評価。昨年の朝日杯フューチュリティS(G1)でドウデュースと接戦を繰り広げた馬が、改めて実力を証明してみせた。

 その一方、今年のNHKマイルCで話題となったのは、153万2370円の大万馬券となった超高配当。お宝馬券の立役者となったのは、出走した18頭中の最低人気ながら3着に食い込んだカワキタレブリー(牡3、栗東・杉山佳明厩舎)である。

 前走のアーリントンC(G3)を12番人気で11着に大敗していた同馬の成績は、2歳時にデイリー杯2歳S(G2)を7番人気で3着に入った程度。トップクラスの実力馬が集まるG1の舞台でノーマークだったのも無理はない。

「ゲートで出遅れてしまいましたが、焦らずスムーズに行こうと思って、じっくり溜めていきました。最後は良い脚を使ってくれました」

 殊勲の激走をそう振り返った菅原明良騎手だが、出遅れたことで腹を決めた好判断だったといえる。2着のマテンロウオリオンも同じく出遅れから追い込む競馬だっただけに、後方待機策組に向いた展開も結果的に見事にハマった。「災い転じて福となす」とは、まさにこういうことなのだろう。

 また、2007年のNHKマイルC以来となる18番人気馬の激走も、ネットの掲示板やSNSで話題となった。ちなみにこのときは、ムラマサノヨートーが3着に入り、3連単の払戻しは973万9870円。これはJRA・平地G1の高額配当ランキングでも3位(5月8日現在)というとんでもない波乱だった。

サイン馬券なら的中も夢ではなかった?

 とはいえ、15年ぶりに再現された最低人気馬の激走も、このサインに気付けていれば、もしかしたら拾うことが出来たかもしれない。

「前回なぜ973万馬券が出たのかというと、3着馬が最低人気だっただけではなく、1着馬もまた17番人気の大穴だったからなんです。この年のNHKマイルCを優勝したのは、スプリンターズSと安田記念の両G1を制したブラックホークの半妹ピンクカメオでした。

勘のいい人はすでに気付いたと思いますけど、同馬はつい先日に亡くなったばかり。結果論ではありますが、NHKマイルCの直前というのもなんだか思わせぶりなタイミングですね」(競馬誌ライター)

 言われてみれば、確かにピンクカメオが死亡したのは先月29日のこと。たったこれだけの情報で18番人気馬が激走するなんてことを予想しろというのは無理のある話である。

 ただ、レースが終わってからの後付けが多い「サイン馬券」は、根強いファンのいる予想法のひとつ。

 1着マンハッタンカフェ、2着アメリカンボスで決まった2001年の有馬記念(G1)が、3番人気と13番人気の組み合わせにより、馬連の払戻しが4万8650円の万馬券と荒れたこともあった。世相を反映することが多いといわれる有馬記念なら、アメリカのマンハッタンで同時多発テロが起きた年だけに、気付けていれば買えたかもしれないと当時は話題になった。

 となると、18番人気馬が3着に入った年の勝ち馬ピンクカメオの死から連想できたファンがいても不思議ではない。実際のところ、これがきっかけでカワキタブレリーに目を付けた研究熱心なサイン馬券派がいたかどうかはわからないが……。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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