JRA「重賞15連敗」横山武史に意識の変化!? 背中で語る父の「大胆騎乗」も刺激か…レシステンシアと挑む崖っぷちからの脱出
15日、東京競馬場では第17回ヴィクトリアマイル(G1)が行われる。
無敗の三冠牝馬や、芝マイルG1で2勝を挙げる白毛のスターホースなど、G1馬が5頭も参戦を表明している豪華な一戦。ここに高松宮記念(G1)と同じタッグで挑むのが、横山武史騎手とレシステンシア(牝5歳、栗東・松下武士厩舎)だ。
昨年のこのレースで6着と敗れた後、秋以降はスプリント路線に照準を合わせ、セントウルS(G2)を勝利。スプリンターズS(G1)と香港スプリント(G1)でも2着と好走し、高松宮記念では単勝2.2倍の1番人気に推された。
しかし、初コンビとなった横山武史騎手の積極的な騎乗に応えて終始先頭でレースを進めるも、残り200mを過ぎたあたりで後続につかまってしまう。結果的には差し決着を呼び込む形となり、6着という悔しい敗戦を喫した。
期待を大きく裏切ってしまったこともあり、鞍上は批判の的となる。悔しい形で春のG1戦線の開幕戦を終えると、続く大阪杯(G1)では単勝1.5倍のエフフォーリアで9着惨敗。翌週の桜花賞(G1)でも単勝3.2倍のナミュールで10着と、1番人気の馬でよもやの3連敗。競馬ファンからの風当たりはさらに強くなった。
3月のチューリップ賞(G2)を勝って以降、現在のところJRAの重賞は15連敗中。昨年はG1で5勝を挙げるなどセンセーショナルな活躍が目立っただけに、今年の戦いぶりが不振と見られるのは仕方がないことかもしれない。
レシステンシアと挑む崖っぷちからの脱出
トンネルの出口を探してもがき苦しむ日々が続く中、悩める男を刺激したのが家族の活躍だ。
兄の横山和生騎手は、タイトルホルダーとのコンビで天皇賞・春を制覇。馬の特性を掴み、積極果敢な逃げ切りでディープボンドに7馬身差をつける圧勝劇。嬉しいG1初勝利を挙げた。
そして先週は、父の横山典弘騎手が東京で大暴れ。8日の湘南S(3勝クラス)では1番人気のジャスティンカフェで道中15番手から虎視眈々と進めると、最後は上がり32秒9という異次元の末脚で見事な差し切り勝ち。好メンバーが揃った中、2着に3馬身差をつける完勝は観客の度肝を抜いた。
さらにメインレースのNHKマイルC(G1)でも、3番人気のマテンロウオリオンとともに腹を括った後方待機。大丈夫なのかという不安を与えながら、最後は大外から33秒5の脚を使ってゴール前強襲。惜しくも勝ち馬にはクビ差届かなかったが、強心臓ぶりを発揮して見せ場を作った。
すると、その直後の最終レース。2番人気のクリーンスレイトに騎乗した横山武騎手は、最後方でじっと構える父さながらの騎乗を披露。道中は16番手とダート戦では絶望的な位置にも見えたが、最後は大外から上がり最速34秒7の豪脚を繰り出し、1番人気のアナンシエーションを差し切る快勝に導いた。
「変にポジションを取らず、あえてしまいに賭ける競馬をした」と振り返った鞍上。積極的な位置取りで勝負に行く姿勢が強い騎手が、人気サイドの馬で見せた大胆騎乗。自身の体内時計と馬の能力を信じた“慌てず騒がず”の姿勢には、目の前で見た父の背中が影響していたのではないだろうか。
昨年の大ブレイク以降、人気馬への騎乗が多くなり、こうした大胆さは次第に影を潜めていったように思う。常に結果が求められる中で、勝ちに行った姿勢が裏目に出て敗れてしまう。その悪循環を今年のスランプの一因と見れば、クリーンスレイトでの吹っ切れたような騎乗ぶりには好感が持てる。
そんな兆しが見え始めた中で迎える、レシステンシアとの“リベンジ戦”。騎手にとっても試金石の一戦となるのは間違いない。
スプリント戦線で活躍するほどのスピードから、今回も逃げや先行という見方は多く、展開のカギを握る一頭としても名前が挙げられているが、同馬にとってはこれが5戦ぶりのマイル戦。陣営も「東京のマイルはベスト舞台ではない」とし、「距離はそれなりにこなせると思う」と、距離に関してはやや控えめなトーンとなっている。
コンビ2戦目となる今回は距離の不安と前走の反省も踏まえ、これまで以上に控える形で末脚に賭ける乗り方というのも可能性として考えられるだろう。陣営も「ハナにはこだわらない」と語っており、近走と比べて印も薄くなりそうなだけに、鞍上が思い切った戦法を採ってきても何ら驚きはない。
苦難のG1戦線のはじまりとなったレシステンシアで、トンネル脱出のキッカケを掴むことができるか。“横山家らしさ”から復調の気配が漂う、横山武騎手の手綱さばきに注目だ。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。