JRAオークス(G1)元主戦騎手の「犠牲バント」で二冠達成!? 親子2代で「戦力外通告」の憂き目…自身はまさかの不戦敗
22日、東京競馬場で行われたオークス(G1)は、3番人気スターズオンアース(牝3、美浦・高柳瑞樹厩舎)が、上がり最速33秒7の脚を繰り出して快勝。桜花賞(G1)に続く牝馬二冠を達成した。
前走は7番人気の伏兵で勝利したこともあり、フロック視する声も出ていたが、オークスを完勝したことで“雑音”も封印。2着馬とハナ差の辛勝だった桜花賞から、1馬身1/4へと着差を広げたオークスは完勝といえるもの。これで文句なしの世代最強牝馬となった。
その一方で、これほどまでの強さを見せながら、どこかしら物足りないイメージが付きまとった理由の一つに、前哨戦を勝ち切れなかったもどかしさも影響していただろう。
G1を連勝した近2走に対し、桜花賞前までは「5戦1勝」の不甲斐ない成績。昨年8月新潟のデビューを2着に敗れた後、2戦目で初勝利を挙げたものの、赤松賞(1勝クラス)でこの日のオークスで3着だったナミュールの3着に完敗。フェアリーS(G3)でライラック、クイーンC(G3)でプレサージュリフト相手に連続2着となった。
未勝利勝ちの身でも、重賞の1番人気に推されていたことを考えると、当時からスターズオンアースの評価が決して低くなかったことも伝わる。それでも惜敗が続いたことによって、キャリア最低人気となったのが桜花賞である。
結果は周知の通り、見事な勝利を挙げたのだが、その背にデビューから手綱を取っていた石橋脩騎手の姿はなかった。なぜならクイーンC前にコンビが解消していたからだ。
親子2代で「戦力外通告」の憂き目…自身はまさかの不戦敗
チューリップ賞(G2)でナミュールに騎乗予定のあった横山武史騎手の起用は、石橋騎手に対する事実上の“戦力外通告”といえるもの。本番の桜花賞も川田将雅騎手に乗り替わっての戴冠。オークスで川田騎手がアートハウスを選択しても、選ばれたのはC.ルメール騎手であり、石橋騎手の再登板はなくなった。
それだけに、お手馬を失った石橋騎手にとって、オークスでコンビを組むサウンドビバーチェ(牝3、栗東・高柳大輔厩舎)の存在は、何より心強かったに違いない。
だが、石橋騎手の不運はまだ終わらなかった。
なんと、サウンドビバーチェがスタート地点で他の馬に蹴られて放馬。馬体検査の結果、顔部挫創を発症していることが判明し、競走除外となってしまったのだ。
結局、またしてもパートナーを失った石橋騎手は桜花賞、オークス共に“見学”という憂き目に……。目の前で二冠を制した元お手馬とルメール騎手をどのような想いで見つめていただろうか。
思い起こせば、石橋騎手にはスターズオンアースとサウンドビバーチェの父ドゥラメンテとも浅からぬ因縁がある。
初めてコンビを任されたセントポーリア賞を5馬身差で圧勝し、続く共同通信杯(G3)で単勝オッズ1.8倍の大本命に支持されたドゥラメンテ。だが、石橋騎手は道中で折り合いをつけられず、リアルスティール相手に不覚を取った。
その後、M.デムーロ騎手へ乗り替わりが発表されたドゥラメンテは、皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)を連勝して春二冠を達成。そして、娘であるスターズオンアースもまた、石橋騎手が降板した途端にG1を連勝し、自身が騎乗予定のサウンドビバーチェは競走除外の不戦敗という厳しい現実が待っていた。
とはいえ、そこに至るまでの石橋騎手の貢献は決して小さいものではなく、結果的に“犠牲バント”のような役割を演じてしまったことは、何とも皮肉な話である。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。