「ウマ娘VSダノックス」セレクトセールで爆買い対決
11日と12日の2日間にわたり、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで「セレクトセール2022」が開催された。
今年は上場馬の種牡馬の欄から「ディープインパクト」の文字が完全に消滅し、後継種牡馬争いに注目が集まる新時代へと突入。初日の1歳馬も2日目の当歳馬もそれぞれのセッションで史上最高の売上を叩き出す大盛況となり、2日間の総売上は257億6250万円となり、昨年の最高記録225億5600万円を大きく上回った(金額はすべて税抜き)。
「ウマ娘VSダノックス」セレクトセールで爆買い対決
そして昨年に続いて大きな注目を集めたのが、新進気鋭の馬主・藤田晋氏による“爆買い”だ。
人気競馬ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で有名な株式会社サイバーエージェントの社長である同氏は、昨年も2日間で計18頭の幼駒を競り落とし、その総額が23億6200万円にのぼったことが話題を集めた。
少し前はJRAデビュー戦を控える新米馬主という立場だったが、その後の活躍は競馬ファンの皆様もご存知の通り。所有馬の第一世代から5頭が勝利を挙げ、その中でジャングロがニュージーランドT(G2)を制覇。デビューから1年と経たない間に重賞制覇も成し遂げている。
そんな“持ってる”オーナーは今年もエンジン全開。初日から9頭を落札し、いきなり11億4400万円のお買い上げで周囲をあっと言わせると、2日目もペースを緩めることなく9頭を落札。計18頭のうち12頭が1億円超えで、2日間の落札総額は参加者の中で断トツの22億2600万円だった。
「今年はいろいろな専門家の方々に協力をしていただき、準備を綿密にしました」と語っていた藤田氏。2日間を終えての総括では「想定外に競り負けた」と少し悔しさもにじませたが、「頭数は計画通り」と振り返ったように来年、再来年に向けた準備を整えることには成功したようだ。
その藤田氏と火花散る攻防を見せたのが、(株)ダノックスだった。
初日のハイライトと言っても過言ではない上場番号76、モシーンの2021(父モーリス)を巡る争いは見応え十分。1億円のスタートに対してすぐに「2億!」の声が飛ぶと、そこからは場内のざわつきをよそに空中戦が勃発。粘る藤田氏をねじ伏せ、4億5000万円で競り落としたのが「ダノン」の冠名でお馴染みの大馬主だった。
ダノックスの岡田良樹ディレクターによると、「オーナーがまだモーリスの子を走らせていないので非常に興味を抱いていた」とのこと。ダノックスの代表である野田順弘氏の強い想いもあって、1歳馬セール史上2番目という高額での決着となった。
このモシーンの2021に関しては、ノーザンファームの代表・吉田勝己氏も「今までに見たことがないくらい良い馬」とその素質を絶賛。「値段がどうかは分かりませんけど……」と驚きまじりに笑ったが、数多の名馬を見てきたホースマンに「相当走ると思う」と言わしめたのだから、今から期待を抱かずにはいられない。
なお、ダノックスは計13頭を落札し、その総額は17億4300万円。トップの藤田氏とあわせた合計額は39億6900万円となり、両者の落札額だけで売上全体の15.4%を占めているというから驚きだ。
ちなみに、購入者別の落札総額トップ5をまとめると以下の通りとなる。
1位 22億2600万円 藤田晋
2位 17億4300万円 (株)ダノックス
3位 13億9600万円 金子真人ホールディングス(株)
4位 9億2200万円 田畑利彦
5位 9億1700万円 里見治
2トップ以外では、こちらも競馬ファンにとってはお馴染みの金子真人ホールディングス(株)が10億円超えを記録している。
こちらは初日にラルケットの2021(父レイデオロ)を2億2000万円で落札したのに続き、2日目にはラルケットの2022(父サートゥルナーリア)を3億円で落札。G1馬・ステルヴィオを輩出した母の子を2日続けて競り落としたのが印象的だった。
もちろん、現時点で高い評価を受けるに越したことはないが、高い値段がついたからといって結果を残せるとは限らないのが厳しい勝負の世界。
無事にデビューまでこぎつけ、期待通りの活躍を見せるスターがどれだけ現れるか。数年後の答え合わせを楽しみにしたい。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。