福永祐一「充実のラインアップ」でダート界制圧へ!
18日、盛岡競馬場で行われた交流重賞のマーキュリーC(G3)は2番人気バーデンヴァイラーが優勝。前走のアンタレスS(G3)では3番人気ながら思わぬ大敗を喫したが、巻き返しを期した一戦で見事な変わり身をみせた。
「内容としても、結果も良かったですし言うことなしです」
レース後、そう語ったのは鞍上の福永祐一騎手。前走は同日に行われた皐月賞(G1)でジオグリフに騎乗することもあって幸英明騎手が騎乗していたが、コンビ復活の舞台で最高の結果を残した。
そんな福永騎手に19日、更なる朗報が舞い込む。
ダートG1・5勝を誇るオメガパフュームの半弟で、16日に行われたいわき特別(2勝クラス)をコースレコードタイで圧勝した大物候補が、福永騎手との新コンビで8月のレパードS(G3)へ向かうことが分かったのだ。
その相手とはホウオウルーレット(牡3、美浦・栗田徹厩舎)。同馬は、昨年12月に中山ダート1800mでデビューした際、2着に7馬身差をつけて圧勝した逸材。単勝1.4倍に推された2戦目の黒竹賞(3歳1勝クラス)でも2着に6馬身差をつける圧倒的な強さを見せ、ダート界の「東の大物候補」として早くから頭角を現していた。
しかし、通過点と思われた続く伏竜S(OP)で単勝1.3倍の断然人気を裏切るまさかの5着。続く青竜S(OP)はこれまでの先行策ではなく、好位から差す競馬を試みるも2着。連敗を喫した。
とはいえ、伏竜Sの勝ち馬デリカダは3戦無敗。2着ノットゥルノと3着ペイシャエスが先週のジャパンダートダービー(G1)でワンツーフィニッシュを決めている。相手関係を考えれば、世代トップクラスの実力を証明していたといえる。
そんななか、古馬との初対戦となった上述のいわき特別での走りは、ファンの度肝を抜くには十分過ぎる内容だった。
道中は中団よりやや後方でレースを進め、4コーナーにかけて捲り気味に押し上げ最後の直線へ。大外から並ぶ間もなく前にいた馬たちを飲み込むと、最後には鞍上の田辺裕信騎手が手綱を緩めるほどの大楽勝。もはや能力の高さを疑う余地はないだろう。
そんな世代トップクラスの馬が回ってきたのだから、福永騎手にとっても願ってもないチャンスといえるだろう。
嬉しいことに、現在のダート界においては多くの有力馬を抱えており、ダート戦線におけるお手馬のラインアップは非常に充実している。古馬ではフェブラリーS(G1)を制したカフェファラオをはじめ、ダート転向後に4連勝してアンタレスSで2着したグロリアムンディや上述のマーキュリーCを制したバーデンヴァイラーなど重賞級の実力馬が揃う。
また、現3歳世代にも昇竜S(OP)と端午S(OP)を連勝し、ユニコーンS(G3)で1番人気に支持されたリメイクがおり、さらにホウオウルーレットが加わるなら頼もしい限りだろう。
ただ、福永騎手はフェブラリーSこそメイショウボーラーやカフェファラオで2勝を挙げているものの、JRAの二大ダートG1のもう一つであるチャンピオンズC(G1)【旧ジャパンCダート(G1)】は、12回挑戦してまだ勝利がない。
それでも自身の初戴冠や打倒テーオーケインズへ向け、1頭でも多く強力な助っ人が増えるのは心強いはずだ。ホウオウルーレットを管理する栗田調教師も「まだまだ奥がありそう」と期待を寄せている。
実際、直近10年を振り返ってもレパードSを勝ったホッコータルマエ、インカンテーション、ローズプリンスダムなどが同年のチャンピオンズCへ挑戦している例もある。早くもG1という大舞台を見据えたレース選択と騎手起用なのかもしれない。
今後の大舞台へ向け、心強い朗報を得た福永騎手。無論、結果が大きく影響するではあろうが、チャンピオンズC初制覇のチャンスが増えたと言えよう。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?