今村聖奈が挑む武豊が築いた「35年前」の高過ぎる壁

今村聖奈騎手

 今月3日、重賞初挑戦となったCBC賞(G3)をテイエムスパーダとのコンビで制した今村聖奈騎手。レコード更新となった1分5秒8の勝ち時計も衝撃的だったが、ルーキーらしからぬ堂々たるレース運びには誰もの目を引いたことだろう。

「馬の力を信じて自信を持って乗れた」

 この偉業をそう振り返ったコメントから伝わるように、新人離れした思い切りの良さも好結果に結び付いた。主導権争いに怯むことなく、レコードが出るようなハイペースを自ら演出して押し切る勝利は見事としか言いようがない。

 重賞初騎乗初制覇は、2008年に達成した宮崎北斗騎手以来となる史上5人目。デビュー年に限れば、1998年に達成した池添謙一騎手以来24年ぶり4人目の快挙をいとも容易く成し遂げてしまったのだから、もはや「新人」「女性」という先入観に捉われない方がいいかもしれない。

 勝利数でも新人騎手の中では断トツ1位の21勝を挙げている今村騎手の快進撃は止まることを知らない。この活躍が「本物」ならば、今後の重賞戦線でもその存在感は増していくだろう。

カデナ

 そんな今村騎手だが、“初重賞勝利効果”もあってか、今週末の中京記念(G3)でも有力馬の1頭と目されているカデナ(牡8、栗東・中竹和也厩舎)の騎乗依頼が舞い込んだ。もしここでも勝つようならCBC賞に続いて2つ目の重賞勝利も視野に入ってくる。

 また、デビュー年に重賞制覇を達成した現役騎手には、上述した池添騎手、和田竜二騎手、江田照男騎手、三浦皇成騎手などがいるが、この中に連続で重賞制覇した騎手は一人もいない。

 初騎乗で重賞勝ちすら史上5人目の快挙だったにもかかわらず、2度目の騎乗機会で連勝するとなると、それこそとんでもない大物新人が現れたことになる。

武豊が築いた「35年前」の高過ぎる壁

 なぜなら比較対象となる相手が競馬界の第一人者である武豊騎手だからだ。重賞初勝利こそ武豊騎手より早い7月にクリアした今村騎手だが、連続勝利のハードルは相当高くなることは間違いない。

 1987年にデビューした武豊騎手は、同年10月の京都大賞典(G2)をトウカイローマンで制して重賞初制覇。勢いそのままに、翌週に行われた京都新聞杯(G2)もレオテンザンで連勝し、2週連続で重賞を勝つという離れ業に成功している。

 もし今村騎手が中京記念を勝利したなら、あの競馬界のレジェンドより3ヶ月先に達成してしまうのだ。しかも重賞初騎乗初勝利のオマケまでついてくるのだから、事の重大さに気付かされる。

 また、今村騎手にとって幸運なのは、パートナーのカデナが小倉で【1.1.1.1/4】の好成績を誇るコース巧者であることだ。一見、強調するほどでもないように感じられるこの数字だが、この4回はすべてが重賞でのもの。レース名は「中京記念」ながら京都競馬場の改修工事の関係で昨年に続いて小倉競馬場での開催。ここまで条件が揃うと「持っている」としかいいようがない。

 近走はダートを中心に使われているカデナだが、3歳時には芝の重賞レース弥生賞(G2)を制するなど、クラシック候補として期待されたほどの実力馬。低迷した時期もあったが、6歳の冬に出走した小倉大賞典(G3)で3年ぶりの重賞勝ちを飾る復活も遂げた。8歳とはいえ、今年の小倉大賞典でも3着に入っており、まだまだ元気。メンバー的にも一発を狙える存在といえるだろう。

「最大の懸念はメンバー最軽量だったCBC賞の48キロから一転して今回はトップハンデの57.5キロに大幅増量になることでしょう。一気に9.5キロも増える訳ですから、軽ハンデを味方につけた前回とは作戦も当然変わってきます。

後ろからの競馬が多いカデナだけに、道中のコース取りや仕掛けのタイミングが着順に大きく影響するため、間違いなく乗り役の手腕が問われます。それだけに、ここでも結果を残せれば関係者の評価もさらに上がるはずです」(競馬誌ライター)

 ここを勝てば武豊騎手の記録に並び、さらに翌週に行われるアイビスサマーダッシュ(G3)には、オヌシナニモノとのコンビで参戦することがすでに決まっており、更なる記録更新への楽しみは尽きない。

 新人騎手の中では、突出した快進撃を続けている今村騎手。武豊騎手が重賞初制覇から達成した「ルーキーイヤー騎乗機会連続重賞制覇」への挑戦から今週も目が離せない。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
 ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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