日本第3の白毛勢力「シンデレラ一族」の末裔が話題
JRA夏の北海道シリーズは、6週にわたって行われた函館開催が終了。今週からは7週間の札幌開催がスタートする。
函館開催のフィナーレを盛り上げたのは白毛馬のハヤヤッコだった。最終日の17日に行われた“泥んこ”馬場の函館記念(G3)を好位から抜け出して勝利。次走は札幌記念(G2)を予定しており、同じシラユキヒメ一族のソダシと初対決を迎えることになる。
もう1頭、夏の函館を盛り上げた白毛馬がいた。新馬戦で父ゴールドシップを彷彿とさせるマクリを見せたアオラキだ。2戦目の未勝利戦では獅子舞のように首を振る仕草も話題になった。4着、3着と勝利は挙げられなかったが、気性に成長が見られれば、勝ち上がるのは時間の問題だろう。
見た目で混同されやすいが、アオラキはシラユキヒメの血は引いていない。白毛のルーツはニュージーランド生まれの祖母ジオペラハウスにさかのぼる。その娘、つまりアオラキの母カスタディーヴァが日本に持ち込まれたのは、シラユキヒメ一族に続く白毛の繁栄を狙ってのことだったのは容易に想像がつく。そんなカスタディーヴァが繁殖入り後にゴールドシップと交配され、誕生したのがアオラキだった。
国内では「白毛馬は走らない」と言われた時期もあったが、ここ数年はソダシを筆頭に活躍馬が続出。今後カスタディーヴァ一族が活躍することになれば、逆に「白毛馬の方が走る」と言われる時代になるかもしれない。
すでに国内で広がりを見せているシラユキヒメ一族と、その次を狙うカスタディーヴァ一族。実は、その次を狙う「第三の勢力」も存在している。
数年前に2戦して引退した白毛のサトノジャスミンという牝馬を覚えているだろうか。アメリカから持ち込まれ、19年にデビューしたが、2戦続けて惨敗するとすぐに繁殖に上がった。
「シンデレラ一族」の末裔が話題!?
21年に生まれた父オルフェーヴルの初仔(現1歳)は栗毛だったが、今年生まれた父ゴールドシップの2番仔は白毛として誕生。同馬は、当歳ながらローレルクラブの目玉として、6月下旬に発表された募集ラインアップに名を連ねた。今月になってYouTube上に同馬の歩様動画が公開されると、真っ白な馬体を見たファンからは「可愛い」という声が殺到している。
「一口クラブの募集は通常1歳馬が多いのですが、ローレルクラブは2月に生まれたばかりのサトノジャスミン2022を当歳時点で募集しました。動画を見ていただくとわかりますが、馬体は当然1歳馬よりもかなり小さく、競走馬というよりは、まだ子馬といった感じです。
気になる募集金額は総額3000万円。合計500口用意されているので、1口当たりのお値段は6万円になります。ノーザン系のクラブなら安い部類に入るかもしれませんが、母の実績などを勘案すれば、決して安い買い物ではないと思います。それでも見た目の可愛さも相まって人気はするでしょうね」(競馬誌ライター)
また、気になったのはローレルクラブが公式Twitterで同馬を「“シンデレラ一族”の末裔」と紹介したことである。シラユキヒメ一族を意識したネーミングかと思いきや、実はサトノジャスミン2022の13代母の名前がシンデレラなのだ。
白毛に突然変異を遂げたのはサトノジャスミン2022の6代母にあたるホワイトビューティーという馬だが、シラユキヒメ一族に対抗するにはもってこいの名称といえるかもしれない。
近い将来、シラユキヒメ一族とシンデレラ一族による“白毛対決”で盛り上がる日は来るのか。サトノジャスミン2022の成長からも目が離せない。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。